橋 祐樹  たかはし ひろき

2012年中途入社

  • 未来・先端研究部 研究主任

大学時代の専門分野:建築環境

「人」と「建築空間」のより良い関係を追い続ける異色の探求者

高橋は、学生の頃から全く軸がブレていない。
自身のテーマに向かって経験を重ね、その軸を太く強くしながら研究の幅と奥行きを広げている。

専門は、建築環境心理・生理・知的生産性。
簡単に言えば、建築空間を“人”の観点でとらえ、空間が人に及ぼす影響を探る分野だ。

2012年に博士号を取得し、研究員として入社。途中、1年半、ジョブ・ローテーション(※1)で設備設計を経験した後、2年間のデンマーク留学。
現在は『COT-Lab大手町』(※2)に拠点を移し、ワーカーライフログ利活用の研究に取り組んでいる。

  職務範囲の拡大のために実施しているジョブ・ローテーション制度(職務転換)のこと

  オープンイノベーションのためのコラボスペース「Inspired.Lab(インスパイアードラボ)」内に構えるオープンラボ

院生時代から竹中と共同研究。長いインターンを経て研究員に

「入社9年目ですけど、院生の頃から竹中工務店との共同研究に携わっていたので、付き合いは、もう13~14年になります」

「この分野の研究って、どう空間をつくって、それをどう評価して、また設計につなげるか、が必要なんです。そして、建物内だけでなく、移動空間や外部空間を含めてトータルで生活空間を対象として考えたい。それらを包含して取り組める所となると、ちょうどいいのがゼネコン。当時お世話になった竹中技術研究所の皆さんが、一緒に仕事をしたいな、と思う方ばかりだったので、それが一番の決め手になりました」

当初、高橋は修士課程が終わったタイミングでの就職を考えていた。しかし、自身が取り組んでいた課題は、2年では到底まとめきれるものではなかった。
「竹中に枠があれば、ぜひお願いします!と図々しくもお話していたんですけど、途中で、やっぱり博士に進みます!って。迷惑をかけたのに、3年も待っていてくれて…」

共同研究に携わった5年間は、長いインターンみたいだったと高橋は振り返る。
「“心の健康”に建築空間ができることは何か?それを探求するために始めた研究と聞いています。当時は『人にやさしい空間』の研究といっていましたが、それが今、建築の建に“にんべん”を付けて『健築®』。当社のコンセプトにつながっているんですよね」

2年間のデンマーク留学。そこで経験した全部に価値がある

入社して2年ほど経った頃、ジョブ・ローテーションで設備設計へ。その後、ほどなくしてデンマーク留学へ。

「デンマークでは、座面から風が出る“空調家具”の評価に取り組みたかったのですが、諸事情により、向こうの大学の環境コンサルのプロジェクトに参加しました。
換気に関する設計基準の見直しをするプロジェクトで、部屋全体を換気するより、その人の周り、極論的にはその人が呼吸する空気をメインに換気した方が効率がいいんですが、そのガイドラインをどうするかとか、換気の基準に使われる外気のCO濃度は街中と郊外では違うので、基準見直しのために改めて外気をモニタリングするとかです」

また、人々の環境意識の高さや、世界一といわれる電子化サービスの利便性に触れ、さまざまな刺激を受けた。

そんな高橋の話を聞くと、留学もかなり自由な印象を受ける。
「留学前にテーマ設定はしました。でもそれに真っ向から応えられる成果が得られなそうで、途中で僕も不安になって上の人に聞いたんですよ、大丈夫なんでしょうか、って。すると、『行って経験した全部に、価値があるんだから』って言ってくれるんですよね。帰国後には、デンマークでのあらゆる経験や刺激を様々な部門の方にお話できる機会をたくさんいただきました」

「人を健やかにしたい」との想いで、これからも続けていきたい

『コトラボ大手町』は、先端企業が入居するコラボスペース「Inspired.Lab」に構えるオープンラボ。現在、高橋はここでワーカーライフログ(※3)利活用の研究を行っている。

「今、ワーカーの位置をデータ取りして、ここに入居している企業さんの働き方や施設の使い方を調査しようとしているところです」

この調査で高橋がやりたいことは3つ。

「一つは、どんな人が、どんな場所を使いたいと思っているかを客観的につかむこと。それが分かれば、こういう人には、こういう空間がいい、っていう設計ができます。また、使う場所が似ている人が、空間に対する好みも似ていると分かれば、 “あなたと似た人は、こんなところを使っています”とレコメンドできる」

「もう一つは健康のモニタリング。たとえば昼間、外が見える明るい所にいると、ストレスにどういう影響があるのか、といったことを研究するためのデータ取りに、実験室を出て生活空間の中で取り組みたいですね」

「そして最後に、モニタリングした健康情報を人にお見せしたい。当社の事業とは直接関係ないかもしれないけれど、情報が見えることで自分の健康について意識してくれる人が増えれば、社会的に意義があると思うんです」

高橋がこうした研究に取り組めるのは、「人にやさしくありたい」「人を健やかにしたい」という想いがあるからこそ。そして、それは、自身がストレスフルであってはできないことでもある。
「恵まれていますよね、仕事も苦にならないし。こういう研究をずっと続けていきたいですね」

  働く人たちの行動履歴。ライフログは、人間の行い (life)をデジタルなデータとして記録(log)に残すことをいう

2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。

プロフィール

髙橋 祐樹  たかはし ひろき

  • 技術研究所
  • 未来・先端研究部
  • 研究主任

博士(工学)

2012年博士号取得、同年研究員として入社。専門は建築環境心理・生理・知的生産性。2017年より2年間のデンマーク留学を経験。現在は『コトラボ大手町』に拠点を移し、ワーカーライフログ利活用研究に従事。

専門分野

  • 建築環境工学
  • 心理・生理/知的生産性
  • ヒューマンファクター

受賞歴

2016年:

空気調和・衛生工学会 振興賞技術振興賞

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竹中技術研究所研究員クローズアップ