井 勇志  たかい たけし

2014年中途入社

  • 未来・先端研究部 主任研究員

大学時代の専門分野:情報技術

“おもしろいと思うことは全部やる” 分野にとらわれない広い視野でまちづくりを考える探究者

コンピュータビジョン(※)を専門とする髙井は、大学教員などを経て40歳を目前に企業に入社した異色の経歴の持ち主。現在は、画像認識、パターン認識、情報システムに関する技術を中心に、情報と建築に関する研究開発を行う。竹中工務店での情報分野の開拓を期待され入社した髙井は、独自の視点で建築やまちづくりの未来を見つめている。

コンピュータビジョン コンピュータに、人間の「視覚」にあたる機能を持たせることを目的とする研究分野。画像や動画の取得・処理から、それらを元にした実世界の高度な認識や理解を対象としており、自動運転やデジタルカメラの顔認識などにも活用されている

学生を差し置いて教員が手を挙げた、ユニークな入社の経緯

「教員を務めていた大学の研究室に竹中のリクルートの方が来ていたんですが、就職活動中の学生に声を掛けても、なぜかみんな反応がいまいちで。ゼネコンって何しているかわからない、というのもあったんでしょうね(笑)」

そう話す髙井自身も建設業界の知識はほぼゼロ。しかし、専門である情報系にとらわれる必要はないと考えていた。

「情報系の人材はみんな優秀なんですが、そのまま情報の会社に行っても、まわりの人が同じようなスキルを持っているので、埋もれてしまうんではないかと。それより、違う分野に行けばもっと活躍できるんじゃないかって思っていたところで。ゼネコンって生活の全てに関わるような仕事じゃないですか。これは絶対おもしろいはずだと思って、自分が手を挙げました」

リアルとバーチャルの融合で、街そのものの価値を追求

“新天地”は予想以上に刺激的な場所だった。企業として携わる領域の幅広さは「下手な大学よりもいろんな分野がある」と語るほど。その中でも情報分野は大きな伸びしろがあるフィールドだ。

髙井は今、より大きな枠組みでの情報活用に取り組んでいる。まちづくりの分野で最近よく聞かれる“デジタルツイン”もそのひとつ。

「物理的な街とまったく同じ仮想的な街をデジタル空間につくって、今まで起きたことや、これから起こりそうなことをシミュレーションできます。実際の街では、ヒトやモノ、さらに環境が複雑な相互作用を行うことによって、多様で多彩なコトが起きています。竹中には、人流、振動、風、水、音などの高度なシミュレーションや解析の技術がありますし、構造や材料、人や自然生態などの専門家もいる。これらの技術と人の力を組み合わせて、仮想の街をどのようにつくったらいいのか、また、リアルな世界からバーチャルの世界にどうやって情報を入れていくのか、といったことにも取り組んでいこうとしています」

デジタルツインの活用は、世界中の企業や研究者が連携して進める実証都市プロジェクトでも大きな注目を集めている。新たに街をつくり、実際に人が生活する環境でさまざまな先端技術を実証するという壮大なプロジェクトには、髙井らが参加する可能性も。
「個々の技術を活用して、トータルで街としてどういった価値を提供するか、という部分に夢と研究の大きなチャンスがあると感じます」。そんな言葉に、まちづくりの未来を見通す鋭い先見性が表れる。

その技術が誰を幸せにするのか?

技研に入って6年。大学との一番の違いは “現場があること”だと感じている。
「作業所で現場の声を聞いて、『こんなことを試してみたい』と言うと結構やらせてくれたりします」

同時に、作業所に近い部門の社員を研修生として研究所で受け入れるなど、相互の関わりは深い。
「自分の興味を元に、少し遠い将来を見据えた研究開発ができるのも作業所のおかげなので。作業所をどうサポートするか、というのは常に頭にありますね。彼らが幸せになるような技術を提供するのも、我々の仕事だと思っています」

研究所の枠を超えた作業所とのつながりが、大きな刺激になるという髙井。情報や建築に対しても、さまざまな分野の人に興味を持ってもらいたいと語る。
「今やっていることは、もともとの専門分野とは直接関わらないことも多いですが、ものの考え方とか、基本的な技術や知識が生かされています。『この分野をやってきたので、そこだけでやります』というよりは、『これを使ってこの課題も解決できます』というように応用できるところが必ずあるので」

多彩な人材が集まる環境だからこそ、それぞれの専門知識を掛け合わせれば可能性は無限に広がる。

「素晴らしい技術がたくさんあるので、それが社会とどう関わるのか、そうした機能が誰の役に立って誰を幸せにするのか。そういった視点でまちづくりを考えていきたいと思っています」 

2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。

プロフィール

髙井 勇志  たかい たけし

  • 技術研究所
  • 未来・先端研究部
  • 主任研究員

博士(情報学)

大学教員等を経て入社。画像認識やパターン認識など情報系の技術を中心に、情報学と建築学の学際領域に価値を創造する研究を行う。人と環境や、心理など異分野への関心も高い。

専門分野

  • コンピュータビジョン
  • ヒューマンファクタ
  • 機械学習
  • 人工知能
  • IoT

受賞歴

2015年:

建築研究開発コンソーシアム 優秀賞

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竹中技術研究所研究員クローズアップ