西田 恵  にしだ めぐみ

2005年入社

  • 未来・先端研究部 研究主任

学生時代の専門分野:建築環境/予防医学

建築の枠を超えた「環境が健康に及ぼす影響」の研究者

働くオフィス環境や住む地域環境から、「健康はどう影響を受けるのか」、
学生の頃から、「環境が人へどのように影響を及ぼすのか」ということに興味があったという西田。
例えば、普段は意識しなくとも「感覚的に好き」と思っていた環境からの影響を理論的に説明できるようになるプロセスが面白いという。
建物づくりやまちづくりの枠を超え、多くの人の健康づくりに役立つ研究に挑んでいる。

現在の研究までの道筋

大学時代は建築を学び、その後の研究室で光環境の印象評価についての研究を行っていた。
「『人がどう感じるのか』ということに昔から興味があった。」と話す。

大学を卒業後に進学したイギリスの大学院で、自然エネルギーを活用してより快適・健康に過ごせる建築設計の考え方、パッシブデザインを学ぶ。
「それまでエネルギーを使って快適性を確保するのが当たり前と思っていましたが、少しのデザインの工夫で省エネが実現すること、そしてそれが事前の計算でシミュレーションできることを知り、そういう分野で仕事がしたいと思いました。」

竹中技術研究所の環境計画部に配属されてからは、自然換気の計算・シミュレーション・測定・集計・省エネルギー計算などの研究に携わった。
研究所に配属されて一年が経った頃に、「人にやさしい空間の研究」プロジェクトが発足され、生理心理学に関わる研究にも携わるようになっていった。
「環境が人に与える影響を、心理評価だけでなく、心電計や脳波、唾液などの身体データによる客観評価も行うという新たな試みでした。」
自らの興味と情熱で、研究フィールドを広げてきた西田。
一方で、入社してからこれまでに、産休を3回取得しているという。
「研究所に配属されてからの最初の10年間は研究と出産・子育てを繰り返してきましたが、部門のメンバーの協力もあり産休後も会社に戻りやすかったです。休んでいる間も周囲からサポートいただき、研究を続けてこられました。」と微笑む。

現在も育児をしながら、研究者として働いている。
「育児短時間労働や在宅勤務など、自分で働き方を選択できるようになってきたことで、とても働きやすくなってきました。最近は子どもたちが大きくなり、国内外への出張にも支障なく行けるようになりました。」

地域と一緒に取り組むことで深まる研究

2016年から「健築」の研究開発に従事する。「建築ではなく『健築』。建物づくりやまちづくりの枠を超えて、誰もが健やかで、心豊かに生きていける場所を築いていく」というコンセプトのもと、健康なオフィス環境や健康行動促進プログラム開発を実施・健康評価のエビデンスづくりに携わっていった。
また、同じ時期に予防医学分野の研究のため、千葉大学予防医学センター客員研究員を兼任する。「環境が人に与える影響は小さく、その評価は難しいが、大規模データを分析することでその小さな影響を明らかにすることができる予防医学の研究手法が面白かった」と話す。
さらに大学院へと進み、高齢者の住んでいる地域環境と健康の関わりについて研究を行い、研究の幅が広がったという。

現在は、表情分析を用いて健康評価や健康促進へとつなげる研究開発に携わっている。 その一つとして、AIによる笑顔の評価と健康の関係を研究している。高齢者サロンへの参加やお笑いイベントの開催など、地域の方と一緒に取り組むことにやりがいを感じており、参加者の笑顔が増えていることが嬉しいと話す。
また、健康意識の促進につながるコンテンツの社会実装を推進したいという思いから、歩幅を大きくするためのデザイン(歩幅を10㎝大きくすることで、歩行に対する意識を高め、健康増進を図るプログラム)の開発を進めており、近年自治体や企業への実装が増えている。今後は健康コンテンツの提供を行いながら、歩幅への意識や健康への気づきに関するデータを収集し、さらなる展開を図る。

地域や社会の役に立つことを形にしたい

笑顔評価の研究はグループ外との連携が多い。
地域の方や他部門と共に進めることが多くなってきた研究スタイルは、西田のモチベーションに繋がっているという。
今の研究は地域の方と共に実証実験をしている段階だが、地域の方に日常的に使ってもらう未来を目指し挑戦している。

「表情分析・地域の健康づくりは、社会実装するまで続けたい。会社として何の役に立つのか、どんなビジネスモデルが成り立つのか、様々な指摘がある中で、その問題をクリアにしていくことも研究員としてやり遂げたい」
西田の研究に対する思いが、人々の数十年後、数百年後の『健築』へとつながっていく。

2022年11月に行ったインタビューを元に執筆しています。

プロフィール

西田 恵  にしだ めぐみ

  • 技術研究所
  • 未来・先端研究部
  • 研究主任

健築®コンセプトのもと、健康な建築の実現を目指し、健康なオフィス環境、コミュニティのエビデンス取得、健康行動促進プログラム開発など実施している。

専門分野

  • 予防医学
  • 環境生理
  • 心理評価

受賞歴

2020年秋季:

第79回日本公衆衛生学会優秀ポスター賞

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竹中技術研究所研究員クローズアップ