2005年入社
学生時代の専門分野:地盤と建物の動的相互作用
コストの面からは重要だが普段はあまり意識されない建物や地盤の沈下。しかし、沈下は中にいる人々の暮らしやすさや建物の耐久性に大きな影響を及ぼす。
元々は耐震のことを学んでいた谷川。今は建物沈下の研究をしながら、そのノウハウをいかしたプロジェクトの支援に携わっていると谷川は語る。
「『この建物の建設に関わったんだ』と僕らは言いにくい。建ててしまえば見えない部分だから。」そう語る谷川は、人の目に見えない研究とどう向き合っているのか。
建築分野で沈下について研究している人はとても限られている。
谷川は自身の研究分野の魅力についてこう語っている。
「計算が合わないってところに魅力がある。データを入力すれば計算結果は出てくるけど、地盤は自然のものなのでバラツキが大きく、計算技術も発展途上なので、実際の現象をなかなか上手くとらえられない。計算が合わないからこそ実際の建物でデータを集めて計算の正しさを検証したり、方法を修正したりしていく必要がある。机上の話だけで完結しない面白さがある。」と谷川は語った。
通常の建物であれば沈下の計算なんて普通はしない。それは法律で決められている要件を満たしておけば、沈下は問題にならないと考えられているからだ。
しかしそれでも、そんな分野の研究を進めるのは竹中工務店だからこそと言える。
「竹中工務店で建てるのは、もの凄く高い建物だったり、もの凄く軟弱な地盤の上だったりすることがあるのでそんな場合は一個一個計算する。何十年と沈下の計測をして、それで『実際こんなもんだった』と『こういう条件でこういう状況だったらこう違う』っていうデータを先人たちも取ってきています」
「半年に一回15年以上継続して計測している建物もあります。軟弱な地盤で難しいプロジェクトでしたが、長期の沈下を確認して想定の範囲内であることを示すことで、お客さんからも『竹中さんで良かった。他社だとこんなことしてない』という声もいただきました」
今、谷川はこれまで研究で培ってきたノウハウをいかしつつ、プロジェクトの支援も並行して行っている。
「楽しいですね。単純に感謝されるっていうのはありますけど、構造設計の方ではできないことの依頼がくるので、それに対して専門知識とか、ノウハウを共有しながらプロジェクトを進めていく支援ができる。その後、支援したプロジェクトで計測したデータを基に論文を出すこともあります。」と自身の研究とプロジェクトのつながりについても語った。
「プロジェクト支援をしていたおかげで構造設計者とのネットワークができているので、すぐ話を聞いてもらえるんですよね。そういう意味では自分で作った技術を展開するためにも、プロジェクト支援っていうのがキーになっています。我々の技術は建築の根幹部分に関わっているので、始めたら最後までやりきるしかないです。そうなると、開発した技術そのものだけじゃなくて開発した人の信頼度もないとなかなか『じゃあ使ってみよう』ということにならないです」
プロジェクト支援で得た人脈・横のつながりが研究の追い風になっている。
谷川はフレックスタイム制を活用して、効率的に働きプライベートでロッククライミングや語学に挑戦している。「楽しいと思ったらなんでもやりたい」と語る谷川の思想は普段の研究にも表れているようだ。
「面白いと思ったことはとりあえずある程度はやっちゃうこと。竹中ではトップダウンで決める事が少ないので、逆に言うと個人のやりたいことがやれることが多いです。やりたいことが会社の役に立つ見通しが立つものであればやれる」
「あと諦めも大事だったりします。とにかくやりたいことはいっぱいあるので挑戦してダメなら次にみたいな。その中でずっと同じテーマをやり続けることもある。僕も沈下だけはずっとやっています(笑)」
長年、沈下と向き合い、膨大なデータを取得してもなおゴールのないように思える谷川の研究。
「なかなかバッチリ予測が合うってことはなくて…先人たちがつないできた技術を完成させたい気持ちはあるけど、少なくとも僕の会社人生の間には終わらないですね(笑)」
「スペシャリストとして一人でやりたいなとは思いつつ、自分だけだと限界があるので、同じ興味がある仲間を増やして、みんなで研究を進めたいなと感じるところもあります」
谷川の研究は淡々とゴールに向かって進んでいく。
2023年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。部署名は取材当時(2023年10月)のものです。
谷川 友浩 たにかわ ともひろ
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