菊池 卓郎  きくち たくろう

2003年入社

  • 環境・社会研究部

学生時代の専門分野:環境リスク工学

快適な空間の追求と人々との繋がりを深める研究者

菊池は建物の環境工学を専門とする竹中の主任研究員だ。
建築における課題として空調、照明、採光の最適化を研究しており、多数のプロジェクトでその専門知識を発揮している。
さらに「この部分、実は自分の計算結果に基づいてこういう設計になっているんです」と楽しそうに語る姿が印象的で、研究に誇りを感じているようだ。
彼は竹中工務店での長い研究の中で、どのように環境設計に向き合ってきたのか。

シミュレーションを通じて人の行動を考慮した快適環境の追求

「入社前、環境配慮設計に力を入れていて、かっこいい会社だなと思っていました。しかし、入ってみると結構感覚的にやっていたということがわかりました。最初の仕事は、自然採光や自然通風のシミュレーションツールを作ることでした」と振り返る菊池。
技術研究所は、比較的個人に与えられた裁量が大きい。
「私たちはオフィス内の人の流れをシミュレーションして建物内の配置を決定するツールを開発しました。これにより、オフィスワーカーがどれくらい移動して、効率的に動けているか、また人々がお互いに顔を合わせることで親しくなるような状況も予測した上で、ゾーニングを決められるようになりました」

さらに、研究所には空調や照明の実験室がいくつも用意されている。
「実験室には、さまざまな温度や湿度をコントロールできる装置や、太陽光を再現する大きなランプが設置されています。研究所には必要な設備が整っているので、私の創作で実験空間を作り上げることができる」と菊池は話した。

留学制度をいかし、パートナーを連れてアメリカへ

菊池は竹中の留学制度を使って、39歳で渡米した。
過去の研究から人の視覚に関心があった菊池は、建築の中で人の視覚を模擬するフィルターを作り、建物の中で人が明るく感じるのを予測できるようにする研究を行っていた。
「建築の設計が意匠性だけで決まってしまうと面白くない。『こういう設計にしたから、光が入ってくる』というように、その建築の形態で機能は決まっていく。そういう世界観がかっこいい」

また、菊池は留学時、パートナーとともにアメリカに渡っている。
「私は J1級ビザだったんですが、私のパートナーは J2というビザ扱いになり、アメリカの伝統手芸をやっている会社で働くことになりました」
留学制度のおかげで夫婦共々良い経験ができたようだ。

現実のフィードバックを元に研究を進められる魅力

大学ではなく企業の研究員になるメリットとして、
「建った時はいかにも風が通り抜けてとても良い建物なのですが、5年ぐらい経ったら誰もその自然換気を使ってない。そういうリアルなお客様側の状況を私たちは知ることができるので、どうしてダメなのかフィードバックを得られるっていうのは企業側の研究者のメリットなのかなと思っています」と話す菊池。

「環境設計は、多くの人が当然のこととして受け取るものなので、特別に喜ばれることは少ないです。しかし、人々が快適に過ごせていることや、『新しい出会いの機会が増えた』など、社員からポジティブなフィードバックを得られるようになってきていて、これからもその技術をいかしていきたいと思っています」

今後の環境設計を担う若手の研究者たちには、
「みんな自分の研究を続けたいと思っていますし、その気持ちは僕もわかります。しかし、周りを見渡して何を求められているのかよく考え、それに答えるために何をしたら良いか。これまでやってきたことにこだわらず、何でも広くやって欲しいなと思います」

人々が何を求めているのか。創造する環境設計の世界に菊池は情熱を注いでいる。

2023年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。部署名は取材当時(2023年10月)のものです。

プロフィール

菊池 卓郎  きくち たくろう

  • 技術研究所
  • 環境・社会研究部
  • 主任研究員

持続可能な建築環境を目指した設計・制御技術の研究に取り組む

専門分野

  • 建築環境
  • サステナブルデザイン
  • コンピュテーション
  • 居住者行動
  • コミュニケーション
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竹中技術研究所研究員クローズアップ