2020年入社
学生時代の専門分野:室内温熱環境評価、流体シミュレーション
環境・社会研究部の社会システムグループに所属する伊藤は、2020年に新卒で入社した。
大学時代にはクラリネットを演奏し、オーケストラや吹奏楽に打ち込んでいた。
「コンサートホールの設計に興味を持ち、音響面に魅力を感じて建築学科を選びました」
世界最高峰の音響設備と言われるウィーンの楽友協会大ホールで演奏した際には、その豊かな響きに感動し、建築への関心を一層深めるきっかけとなったという。
しかし、大学4年生で温熱環境評価の研究に触れたことで、伊藤の興味は変わっていった。
「設計だけでなく、実際に使われる建物の環境を評価することにやりがいを感じました」
実際の使い勝手や機能性を追求する中で、伊藤は次第に、建物が利用者にとってどれほどの影響を与えるかに関心を持つようになった。
「設計職も魅力的だとは思いましたが、私はそれ以上に、建物がどのように使われ、その性能がどれほど発揮されるかを追求したいと思ったんです」
設計を超えて、建物の価値を最大限に引き出す方法を模索するため、研究職への道が自分に合っていると確信したという。
伊藤が現在取り組んでいるのは、建物の利用者の行動に注目し、その行動を変容させることで建物の性能を最大限に引き出す「行動変容手法」に関する研究だ。
「どれだけデザインや機能性が優れていると設計者が感じていても、その想定と、実際の利用者の感覚や使われ方にギャップがあれば、建物はその価値を十分に発揮しません」と伊藤は語る。
利用者の行動データを詳細に分析し、その結果を基に最適な利用方法を提案することで、建物の性能が最大限発揮されることを目指している。
この手法は、より建物の価値を高め、建物利用者を幸せにし、そして社会全体に貢献することができる可能性を秘めている。
「少しの行動変容が建物の価値を大きく向上させる可能性があるんです」
伊藤の取り組みは、設計から運用に至るまで、建物全体の価値を高め、より快適で効果的な空間を提供する新たな価値創造の一歩となっている。
伊藤は、入社後に専門領域を広げるため、積極的に挑戦してきた。
「温熱環境評価という、人が感じる快適性という分野から更に自身の専門性を広げるために、新たな領域に進むことを決めました」
行動変容手法への関心も、その一環だった。
建物の価値を最大限に引き出すために、利用者の行動パターンを読み解き、それに応じた空間の最適化を行うというデータアプローチを採用している。
「統計学を学ぶことで、データ分析の精度が向上し、人と建物の関わりをより深く理解できるようになりました」と語る伊藤。
この手法は、単に性能評価にとどまらず、行動を変化させ、より良い空間を提供するための強力なツールとなっている。
「データと理論に基づいた手法を開発し、その効果を検証するプロセスを確立することが重要です」
こうした多角的な視点の導入は、伊藤が研究職として求めてきた成長と挑戦の一環だ。
新しい技術やデータを活用することで、伊藤の研究は、より実践的で社会的な影響を与える成果を生み出している。
複数の専門分野を融合し、より豊かな空間づくりに繋げるための挑戦は、今も続いている。
行動変容手法の研究を進める中で、伊藤は心理学や経済学など、他分野の知見を積極的に取り入れている。
「建築は人が使って初めて建築となるのです。人々の行動を深く理解するためには、建築という工学の分野とはいえど、心理学や経済学の視点が欠かせません」
心理学は行動の動機を明らかにし、経済学はその合理性を分析できる学問だ。
これにより、建物がいかに利用者に最適化されるか、さらなる理解を深めることができるという。
「研究職とは、最先端で仕事ができる人です」
その言葉通り、伊藤は最新の知識や技術を駆使して、未来の建築を形作るための挑戦を続けている。
「未来の建築は、人々の日常を豊かにし、持続可能な未来を形作るための存在です」
伊藤の研究は、建物を単なる空間として捉えるのではなく、人々の生活を豊かにし、未来を照らし続ける灯火となる。
伊藤の視線の先には、建築を通じて社会に新たな価値をもたらす未来が広がっている。
2024年9月に行ったインタビューを元に執筆しています。部門名は取材当時(2024年9月)のものです。
伊藤 彰悟 いとう しょうご
「行動変容手法の開発と効果検証」の研究開発、
室内シミュレーション(温熱、光、気流解析)による設計支援、オフィス環境測定&評価、次世代の設備システムの開発に取り組んでいる。
専門分野 |
|
---|