2008年入社
学生時代の専門分野:地震工学
日本で建築を行う際、常に地震対策を十分に検討しなければならない。地震が起きても倒壊しない建物を作るためには、建物の構造設計が重要であり、それを支える地震対策技術の研究・開発が不可欠だ。
「社会にとって必要な技術開発に携わることに、大きなやりがいと使命感を感じています」
そう語る梅田は、地震動・振動グループで地震に関する研究に取り組んでいる。地元福岡での地震をきっかけに、地震工学に興味を持ち、研究を始めたという。
「今の働き方が自分には合っている」とも梅田は感じている。地震対策というニーズに応える研究に没頭しつつ、在宅勤務制度などの柔軟な働き方ができる環境に満足している。
原子力関連施設のような特殊な建物では、地震などの災害に対して、一般の建物以上に詳細な検討が求められる。起こりうる地震動を精度よく予測するためには、地表から深部までの地盤構造を把握する必要がある。その一つの方法として、過去の観測記録を用いて深部の地盤を推定する技術が開発され、高精度な地盤構造の推定が行われている。
「まずは過去の観測データを使って自動で地盤構造を推定したいです。その上で、データ拡充による推定地盤構造の更なる信頼性向上を目的として、新しい地震観測データで自動更新できる状態を目指しています。それが社会全体の安全につながるのがゴールですね」
事前の予測が難しい地震だからこそ、精度の高い推定が求められる。
「入社して間もない頃に東日本大震災があり、日本であれほどの被害が出るとは多くの人が考えていなかった。地震に関する指針や対策が急ピッチで求められました」
この経験を通じて、梅田は自分の研究が特殊建築物から一般建物までの安全性に役立つことを改めて実感した。
研究者としての意識が強まる中で、ジョブローテーションを経験したことが、梅田の視点をさらに広げるきっかけとなった。
「構造設計の部署に異動したとき、研究側から提供していたデータを使う側に立つことができました。現場でどのようにデータが使われ、実際に価値を生むのかがわかって、技術の実用性をより深く理解できました」
梅田は、研究者としての視点に加え、実務者としての視点も得たことで、技術がどう現場で役立つかを考えるようになった。
2022年から在籍した知的財産部では、研究した技術が実際に使われることの重要性を再認識し、技術の実践的な展開の重要性を痛感したという。
「やはり、どれだけ優れた技術でも、使われなければ意味がない。使ってもらってこそ、技術の本当の価値があるんです」
こうした経験を通じて、梅田は研究者としての視点に加え、実務者の視点を持つようになり、技術の真の価値を追求する姿勢がさらに強化された。
「地震は目に見えないし、何が起こっているのか分かりにくい。だからこそ、自分の研究成果を使ってくれる人が身近にいることは、とても嬉しいことです」
長い道のりとなる研究の中で、その成果が誰かに使われ、目に見える形で役立つことが、喜びややりがいにつながると梅田は語る。
「基礎研究で、時間をかけて細かい点を追求することも非常に大切です。でも自分には、開発に近い仕事で、すぐに成果を使ってもらえる環境が一番合っていると感じますね」
梅田は、自分の興味のみでテーマを選ぶのではなく、社会や周囲のニーズに応える形で研究に没頭してきた。その姿勢は、「貢献」という言葉で表現できるだろう。
「休日は山登りをしています。登山が好きなんです」
登山も研究も、時に孤独で、試練の連続である。一歩一歩の積み重ねが、やがて山頂に導き、大きな成果に結びつく。
途中の苦労や挑戦を乗り越えた先に広がる新たな景色こそ、梅田が常に目指しているものであるに違いない。
2024年9月に行ったインタビューを元に執筆しています。部門名は取材当時(2024年9月)のものです。
梅田 尚子 うめだ なおこ
起こり得る地震動を精度よく予測するためには深いところまでの地盤構造の情報が必要である。観測記録を用いた精度の高い地盤構造を推定する技術を開発して、建物の安全性向上に寄与している。
また、専門分野以外の開発技術についても展開促進を積極的に支援し、会社全体の開発成果を最大化する活動にも従事している。
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