2017年入社
学生時代の専門分野:生物学専攻(分子生理学領域)
「人間よりも虫に興味がありました」と語る木村は、生物学を専攻し建築分野で研究を続ける、社内では異色の研究者だ。
当初、教育やメディアの道を考えていたが、大学時代に共同研究先の研究室で、偶然竹中工務店のリクルーターと繋がりができた。この運命的な出会いが、木村の人生を大きく変え、建築の世界へ進むことを決意させた。
「フルタイムで生物の研究が続けられる仕事は、私にとっては狭き門でした。竹中工務店でなければ、私が研究を続けるのは難しかったでしょう」と振り返る木村は、その後、入社を果たした。
入社1年目、木村は施工管理と設備設計を経験し、現場で建築を学んだ。「建築は全くの初心者でしたが、実践的な知識を1から学ばせてもらいました。あの1年間がなければ、今の自分はなかった」と木村は語る。その後、技術研究所で研究に携わっている。途中、設計本部のアドバンストデザイン部門でジョブローテーションを経験し、環境設計や人の快適性に関わるシミュレーション技術を学んだ。この知識が、木村の研究において大きな影響を与えている。
「都市における虫との共存は、私の研究の重要なテーマです」と語る木村の探究は、虫への興味から始まり、建築の新たな可能性へと広がっている。
木村の研究テーマは、自然共生社会の実現を目指した都市空間の提案と、そのための防虫技術の開発だ。竹中工務店で3代目の「虫の専門家」として、自然と共生できる都市の実現を目指しながら、建物に虫が入らないようにする防虫対策に取り組んでいる。
「虫とヒトがうまく棲み分けたり、同じ空間を共有したりできるような、両方が心地よく過ごせる環境を作りたい」というのが木村の目標であり、人間の快適性だけでなく、生き物が住みやすい環境をどう整えるかが、研究の核となっている。
木村は、自然との触れ合いの重要性を強調する。
「子供の頃に自然と触れ合う機会が多いと、大人になったときに環境に配慮した行動をとりやすくなる、という研究結果があります。本来の地域環境と調和する緑地を増やし、その土地由来の生態系にふれる機会や空間を提供することは、建築の会社だからこそできることの1つだと思います」と木村は説明する。
防虫技術の研究を軸に、都市の緑地創出にも貢献することで、虫と人間が共存する社会を目指している。
木村は、竹中工務店で初めて単独運用のSNSを立ち上げ、竹中のグリーンインフラ技術や生物多様性保全、自然共生に関する取り組みを情報発信している。
「竹中工務店の技術や取り組みを広く伝えたくて、3年前にインスタグラムやWEBでの発信を始めました」
アカウント「調の森SHI-RA-BE」では、竹中技術研究所敷地内の緑地で行っている、専門領域の研究員や従業員による様々な技術・取り組みを紹介している。社内外に竹中工務店の活動を伝えるだけでなく、緑化や自然共生に関する意識を変えるツールとしても役立てたいと考えている。
「自然との共生を目指すことが大切だということは広く知られていますが、何をすればよいか分からないという声も多いです。竹中工務店は空間づくりに強みがあるので、建築会社なりのプロセスをSNSで発信し、他の企業・団体との情報共有や、環境に関わる仕事に興味のある学生さんに選択肢の1つとして知ってもらうために活用できればと思います」
SNSを通じた発信で環境保全活動を進める他企業との連携も広がり、協力関係を築いている。
「お互いの活動を見学し課題を共有し合うことで、心強い関係づくりができました。こういった繋がりを、当社が関わるプロジェクトにも役立てたいと考えています」
今後も木村はSNSを活用し、多くの人々との連携を深め、グリーンインフラや自然共生の取り組みを拡大していく意欲を見せている。
建築分野で生物学を専門とする研究者は少ない。その中でも、木村は防虫技術や共生空間の実現に向けたアプローチを追求している。
「これまで培われてきた生物学の知見を、どうやって建物や都市空間の創造に活かせるか、日々模索しています」
「生物学の研究は基礎的なものも多く、社会実装に時間がかかるものも少なくありません。竹中工務店のように、社会と直接結びつきがあり、アイデア次第で会社が社会実装を強くバックアップしてくれる環境で研究できることは、大きな強みです」
木村は将来、社会人博士課程で研究を行い、さらに学びを深めたいと考えている。
「社会実装に結びつけられる研究者になりたい」という木村の情熱は、人と自然が共生する未来を切り開くための鍵となるだろう。
2024年9月に行ったインタビューを元に執筆しています。部門名は取材当時(2024年9月)のものです。
木村 文 きむら ふみ
人と虫がうまく棲み分けし、共生できる空間づくりを目指し、人と生き物の両方が心地いい空間を都市の中に増やすため「設計に活かせる建物への防虫技術の開発」や「ネイチャーポジティブ・自然共生社会に向けた都市の緑地計画の支援技術の開発」といったテーマに取り組んでいる。
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