都市鳥類に配慮した緑地計画支援技術
生物多様性の指標となる鳥類に着目し、当社独自のデータベース等を基に多様な野鳥が棲める緑地づくりを行うことで、地域の生物多様性保全に貢献する緑地計画を支援します。
技術の概要
鳥類は都市における生態系ピラミッドの上位に位置し、多くの鳥類が生息する環境は様々な生物が生息する豊かな空間が形成されていると見なすことができることから、都市の生物多様性の指標とされています。当社では鳥類に着目し、様々な都市公園や屋上緑地等で独自に収集した膨大な鳥類相データを基に、各種の生息モデルや各種が選好する樹種等のデータベースを構築し、数値的根拠を持って緑地計画に反映させることで、多様な野鳥が棲める緑地づくりを支援しています。
生態系ピラミッド
鳥種別 各環境要因が生息確率に与える影響評価(生息地モデル)
調の森SHI-RA-BE では、地域の鳥類調査によって周辺に生息する種を抽出し、敷地面積を踏まえ実現可能な誘致目標種を選定し、目標種の生息地モデルを基に樹木階層別(高木・低木)の面積・密度を設定しました。その上で、多様な植生景観をベースに、目標種が選好する実を付ける樹種を植樹したり、水浴びに適した水深の小川を設け、その周辺に利用しやすいよう低木類を植樹したり、カワセミ営巣用のマウンドを造成したりして、多様な野鳥が生息できる緑地を作りこんでいます。緑化後は定期的な鳥類相調査を実施し、結果を緑地維持管理計画に反映したり、統計的に解析することで、得られた新たな知見を今後の緑地計画にフィードバックさせていきます。
調の森における目標種と選好樹種のリスト
アカハラが好むナンテン
ウグイス等が好むムラサキシキブ
水浴びし易い水深の小川
行動圏の広い野鳥の生息には比較的広域スケールの環境変数(一定範囲の緑被率等)が影響することも分かっており、広域スケールの環境変数が各種の生息に及ぼす影響を定量的に評価することで都市スケールにおける鳥類の生息ポテンシャルを評価することが可能になります。下の図は当社東京本店のある江東区を対象にポテンシャル評価を行った事例で、緑の疎なエリアの空地や街路(水色枠部分)に集中的に植樹した場合の鳥類のネットワーク性の向上を可視化して評価したマップです。このように鳥類のネットワーク性を考慮した場合に重点的に緑化すべきエリアの特定や、多数の事業地を抱える企業に対しては生物多様性(鳥類の生息)向上への貢献度の高い敷地の選定ツール等として活用することができます。空間的な繋がり(ネットワーク性)を評価し景観生態学的な立地特性を明らかにすることによって、都市スケールでの緑地計画支援に繋げていきます。
特定エリアの緑地化前後における鳥類生息ポテンシャル評価
KEY PERSON
緑化生態環境グループ
大学院からの専門性を活かして、緑地設計者や都市計画者が利用しやすい定量的な情報を、生態学的手法によって提供することを目的に研究を行っています。
当研究所には、研究員の特殊な専門性を自由に発揮しやすいボトムアップ型の風土があります。型にはまらない自由な発想で、人と生きものが共生できる環境づくりを柱にして、新たな価値を創出していくことを目指しています。