樹木配置の最適化技術

樹木配置の最適化技術

当社独自のアルゴリズムによって人や生物にとっての熱・光環境を改善する最適な樹木配置を導き出し、生態系と調和した人々の健康やQOLの向上に寄与する緑地を創出します。

技術の概要

樹木は屋外における熱・風環境の緩和、景観の改善といった各種の環境調整機能を有しています。本技術は、樹木配置生成モデルと環境シミュレーション、最適化アルゴリズムを連携させることで、樹木の環境調整機能が最大限発揮される最適な樹木配置を作成するツールです。
樹木配置の最適解は、多様な配置を生成する樹木配置モデル、熱や景観に関する環境シミュレーション、最適化アルゴリズムによるサイクルを繰り返すことで導き出します。

樹木配置最適化の概念図

樹木配置最適化の概念図

調の森 SHI-RA-BE では、水域の水草や生き物の生育環境を向上させるため、以下の4つの目的を設定して樹木配置を最適化しました。
①水温の過度な上昇を抑制するために、夏季日中に水域に入る日射量を最小化
②光合成を促進するために、夏季朝方に水域に入る日射量を最大化
③水温の過度な冷却を防止するために、冬季日中に水域に入る日射量を最大化
④光合成を促進するために、冬季朝方に水域に入る日射量を最大化

下図は最適化の結果を①夏季日中の池面日射量を横軸に、④の冬季朝方の池面日射量を縦軸にとってプロットしたものです。最適化の過程では、2万を超えるパターンについて日射量を評価し、樹木配置の最適解を導き出しました。なお、設定した目的が互いにトレードオフの関係にあったため、最適解は唯一の解ではなく、他のどの解にも劣らない解(パレート解)の集合として導き出されました。パレート解から一つの解を採用し、それを基に最終的な樹木配置計画を作成しました。

結果の例(調の森 SHI-RA-BE)

結果の例(調の森 SHI-RA-BE) ※プロットがそれぞれ異なる樹木配置の結果を示しています。

現在、本技術は温熱・光環境、景観の向上を目的とした最適化に対応しています。
今後は、さらに人流、風環境、生物多様性等を評価項目に加えた多面的なシミュレーション技術を整備し、より魅力的なランドスケープの創出に寄与する最適化技術を展開していきます。

KEY PERSON

藤原 邦彦
技術研究所  自然・生態環境部
風・温熱環境グループ
【専門分野】屋外熱環境の測定・数値解析
機能を実現するための「最適な形」というものに興味があります。そのような興味から、樹木配置や建築形状の最適化技術の開発に携わっています。
「最適な形」の究極は生き物の形だと思っています。生き物は気が遠くなる年月の世代交代と自然淘汰を経て、生存のために最適な形を導き出します。現状の最適化技術ではそのような生物進化の過程における膨大な情報の計算はできませんが、今後も技術を深め、生き物のような複雑で魅力的な「最適な形」を導き出せる技術を作っていきたいです。
藤原 邦彦 技術研究所 自然・生態環境部 風・温熱環境グループ