Project Story 02

ニフレル

ニフレル

人の感性に触れる、
生き物たちの美術館。

2015年、大阪府吹田市にある万博記念公園内に誕生した「NIFREL(ニフレル)」。人の感性「に触れる(ニフレル)」というコンセプトを建物という形にした本プロジェクトは、訪れた人たちがワクワクするようなデザインを目指しつくられた。

  • 星隈 憲二

    星隈 憲二 Kenji Hoshikuma

    • 建築施工管理
    • 1991年入社
    • 構造工学専攻

    本プロジェクトにおいて作業所長を務めた。社内の設計と施工、社外の協力会社と連携し、万博公園記念エリアの新たなランドマークを創出。本件を経験したことで「ものづくりは、ひとづくり」という建築の本質を改めて実感。

  • 北村 仁司

    北村 仁司 Hitoshi Kitamura

    • 建築設計
    • 1996年入社
    • 建築学専攻

    建築設計として、コンペの段階からニフレルのデザインに携わった。竹中工務店が誇る「棟梁精神」を胸に、建築デザインを通じてクライアントの期待を超える価値を提供し続けることを信条としている。

  • 國分 啓瑛

    國分 啓瑛 Hiroaki Kokubun

    • 施工事務
    • 2013年入社
    • 社会学専攻

    ニフレル建設では、工務部施工事務グループでプロジェクトの運営管理を務めた。竣工後にニフレルを訪れた際、多くの来場者の楽しそうな様子を目にしたことで、多くの人や世の中に貢献できたという達成感を得ることができた。

ニフレル|プロジェクトストーリーの画像01

訪れた人の感性に触れる、
これまでにないミュージアム

建物にアプローチする時にワクワクするようなデザイン。生物や自然の魅力を身近に、かつアートを鑑賞するかのように楽しめる空間。株式会社海遊館がプロデュースした体感型ミュージアム「NIFREL(ニフレル)」は、水族館や動物園、美術館、博物館を融合したような、従来にはない斬新な展示施設だ。

人の感性「に触れる(ニフレル)」というコンセプトをひとつの建物として形にするために、竹中工務店の設計力や技術力などの総力がつぎ込まれた。

ニフレル|プロジェクトストーリーの画像02
ニフレル|プロジェクトストーリーの画像03

「ウェブ・ウォール構造」の
考案・実用化に向けて

ニフレル建設の企画が舞い込んだのは2012年。コンペ提出まで1カ月半しか時間がない中、「今までにない展示施設」という要件をいかに満たすか。建築設計の主担当を務めた北村は試行錯誤を重ねた結果、外観デザインのモチーフを「マナティのように滑らかな水生生物」「水中を漂う泡」と定めた。北村にとっては水族館の設計は初めての挑戦であり、だからこそ固定観念にとらわれず自由な発想で設計に取り組むよう努めた。
コンペで竹中工務店の案が採用された後、社内の関連部署の担当者が毎週のように集まり協議を行っていた。作業所長である星隈をはじめ、担当者が特に議論を重ねたのが、デザインを具現化するための工法についてだ。

デザインのモチーフとなる「水生生物」「泡」といった要素を形にするために、流線型のフォルムの外壁に、泡を連想させる複数の開口を設ける案が検討された。しかし、既存の工法で、外壁に複数の開口部を設けると、耐力壁としての評価が困難となる問題が残る。
この問題を解決するために社内で考案されたのが「ウェブ・ウォール構造」だ。鉄筋コンクリート造の壁に、斜めの網目状に複数の菱形の開口を設けるという構造形式である。建築の常識では考えられない手法だったが、全社一丸となってこの前例のない構造形式の実現に取り組んだ。

ニフレル|プロジェクトストーリーの画像04

未知への挑戦を可能にする
「設計施工一貫方式」

ウェブ・ウォール構造の実用化に向けて、あらかじめ設計部門がFEM(有限要素法)解析を実施して、壁への応力を詳細に検討した。さらに、敷地内に巨大なモックアップを作成し、菱形開口に合わせた斜め配筋を施工。複雑な形状の構造物の構築に効果的な高流動コンクリートを流し込む実証実験を行った。竹中工務店が誇る「設計施工一貫方式」によって、計画の早い段階から設計および施工が協業し、建築の常識を覆す難度の高い工法に挑戦したのだ。
一方、建物の設計と並行して、展示生物の生命維持を担うLSS設備の検討も進められていた。一般設備とともにこのLSS設備を担当したのが、施工管理の松本である。

ニフレルでは、人工海水などを水槽に供給するLSS設備の納まりが複雑になるため、設備配管の防水貫通箇所が多数あった。漏水をどう防止するか、また、いかにして展示の邪魔にならないようLSS設備を納めるか、その方法の確立は至難の業だ。さらに、これらを限られた納期でミスなく達成する必要もあった。
松本は課題解決に向けて、施工前に設計図面に加えて展示模型を用意。これをもとに協力会社と施工手順や精度についての詳細を確認・共有した。配管の防水貫通部の納まりについては、関係各部門や協力会社が防水パターンごとに検討を行い、慎重に施工を進めていった。

ニフレル|プロジェクトストーリーの画像05
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ニフレル|プロジェクトストーリーの画像07

プロジェクト完遂に向けて
想いをひとつに

ニフレルの施工当時、竹中工務店は同エリアにて複合施設の開発事業を進めていたため、ピーク時には1日に約3,000人もの作業員が建設に従事していた。こうした大型プロジェクトを円滑に進めるためには作業所の運営や、経費予算・工事損益の管理が欠かせない。こうした業務を担っていたのが、工務部施工事務グループに所属していた國分である。複合施設の開発事業を含むプロジェクト全体の敷地面積は約17万㎡にも及ぶ。その中でニフレルが位置していたのは、工事ゲートから最も遠い場所だ。

工事車両の調整、作業員の動線確保などの最適化において、國分はその力を遺憾なく発揮。ニフレルに携わった全員が「なんとしてもプロジェクトを完遂させる」という強い意志を持って自身の役割に邁進していた。
そして、企画段階から足かけ4年にわたる取り組みを経て2015年11月。ニフレルはついに開業の日を迎えた。「まるで建物自体が生きているみたいだ」。ニフレルの外観デザインをひと目見た多くの人がそんな感想を口にする。開業初年度、ニフレルの入場者は200万人を達成。ニフレルは万博記念公園エリアの新たなランドマークとして人気を呼び、多くの人々に感動と思い出を提供し続けている。