リニューアル事例
-福岡パルコ-
福岡天神の商業集積の核として、市民に親しまれ続けた百貨店ビルの大規模改修です。
1936年、九州初のターミナル百貨店として誕生した当建物は、天神地区の発展と共に規模の拡大を行い、別館新築・地下街接続工事・外壁のカバーリング改修を行ってきました。
2004年の百貨店移転に伴う閉店後、市民から当建物の再生を求める声が相次ぐ中、2008年、都市型商業施設のコンサルティング・運営に定評のあるパルコがリニューアルでの出店を表明しました。その後、詳細な検討や行政協議を経てアスベスト撤去、耐震補強、外・内装改修によるイメージの一新を図り、2010年春、福岡パルコがオープンしました。天神の街に賑わいを呼び戻し、福岡市都市景観賞を受賞しました。
外装イメージの一新
新しい商業施設としての再出発であったことから、旧外観を活かす改修手法ではなく、既存カバーリングを撤去し、再度カバーリングを行う手法を選択しました。天神と共に歩んできた建物の再生と新しい商業施設の誕生を同時に表現し、懐かしさと新しさを併せ持つデザインを目指しました。建物がまるで服を着替えるように、長年親しまれた建物シルエットを純白の衣(アルミパネル)が軽く纏う(まとう)表現としました。夜は、衣の縫い目に見立てたLEDの光のステッチが、季節・シーンに応じた優しい光の演出をしています。
商業空間の魅力再生
内部改修により、基準スパン5.9m/基準階高3.35mという74年前の仕様を、現在に通用する魅力的な商業空間として再生しました。
空調方式を単一ダクト方式から個別パッケージ方式に変更し店舗内のダクト配管の低減、各設備配管配線ルートの図面上での詳細な検討および現地での微調整により天井懐0.7mの中に空調機器や配線配管類を納め天井高2.5mを確保しました。また、直天や折上天井により変化をつけ、圧迫感の払拭と賑わいを演出しました。
既存エスカレーター撤去後、スリム型の新設エスカレーターを片側に寄せることにより生み出した幅11m奥行1.5mの吹抜を下層・中層・上層ゾーンにそれぞれ設け、各ゾーンのテーマに呼応した特徴のあるデザインを行うことによって、空間の変化と開放感を創出しました。
品質の確保
旧店舗の内装解体、新設階段・客用トイレ部分の躯体解体、エスカレーター解体と耐震補強、エスカレーター・非常用EV設置、内装新設を、歩行者や近隣商業施設への影響を最小限に留めつつ、14ヶ月という短い工期内で完成させるために、24時間施工体制で臨みました。
特に耐震補強は、柱鉄板巻立補強323ケ所、柱コンクリート巻立補強47ケ所、壁コンクリート補強89ケ所、壁鉄骨ブレース補強87ケ所、計546ケ所について、内装解体後一つ一つ既存躯体寸法を実測にて確認し補強部材の制作・取り付けを行う必要があったため、施工品質・スケジュール管理を重点的に行いました。エスカレーター解体後の吹抜を利用し、吹抜上部に走行ウインチを設け鉄骨ブレース等の構造材揚重の効率化を図りました。また、耐震補強終了後に実測を行いデータを竣工図に反映することにより、商業施設として今後の予想される改修に備える対応も行っています。
近隣への配慮
資材搬出入は、交通量の多い幹線道路や私鉄コンコースに囲まれていることから、外壁の一部解体と床の仮設補強を行い、車両を建物内に引き入れて近隣や歩行者の安全性を確保した上で、24時間作業を行いました。
安全・環境面において、近隣商業者と作業時間・範囲・養生方法等細部にわたって打合せを行いました。特に振動・騒音・埃については、近隣立会いの上試験施工を行い、事前に周辺への影響を確認するなど、工事中においても商業集積地としてのイメージの維持に努めました。
2重外壁を利用した外皮負荷低減
商業施設は年間を通じて冷房を行うことに着目し、新旧外壁の間に形成される空気層への外気の流入を季節に応じて制御することで、外皮負荷の低減(日積算貫流熱量4%削減)を行っています。
建築概要
- 用途
- 物販店舗
- 所在地
- 福岡県福岡市中央区
- 竣工
- 1936年10月
- 改修
- 2010年3月
- 建築主
- 学校法人都築学園、株式会社パルコ
- 改修設計
- 竹中工務店
- 改修施工
- 竹中工務店
- 建築面積
- 2,704.28㎡
- 延床面積
- 25,188.07㎡
- 構造/規模
- RC造、SRC造、S造/地下1階・地上9階・塔屋3階
建築作品 https://www.takenaka.co.jp/majorworks/61807442010.html