Solution
驚異の疲労耐久性を有する合金で地震エネルギーを吸収
-FMS合金
 制振ダンパー-
様々な建物条件に適用可能な各種ダンパーを用意

制振ダンパーの素材として現在一般的に使われている鋼材*¹に比べ、疲労耐久性を約10倍に高めたFe-Mn-Si系合金*²(特許登録済、以下FMS合金)を用いた制振ダンパーを当社、物質・材料研究機構、淡路マテリアで共同開発しました。

耐疲労性能に優れたFMS合金制振ダンパーは、長周期・長時間地震動対策技術として開発し、2014年に「JPタワー名古屋」に初適用しました。その後、さらなる技術開発によりプロジェクト展開を進めてきました。
2019年にはFMS合金の工業的製造方法と鋼材との溶接技術の確立により、地震エネルギーを吸収する芯材変形部を平鋼(-)形状としたブレース型FMS合金制振ダンパーを開発し、「愛知県国際展示場」に適用しました。
2023年には、新たにFMS合金どうしの溶接技術を確立し、ダンパー芯材変形部を溶接組立により十字断面として負担荷重を増大したブレース型FMS合金制振ダンパーを実現しました。これにより、設置するダンパー総数を低減できるようになり、より自由度の高い建築デザイン・大空間の実現・空間の有効利用が可能となり、超高層建物・大規模建物への積極的な適用が可能となりました。

  • 1 LY225等の制振用鋼材および建築構造用の一般鋼材
  • 2 Fe-Mn-Si系合金:Fe(鉄)を主成分として高濃度のMn(マンガン)やSi(ケイ素)
    などを添加した疲労耐久性に優れる鉄系形状記憶合金・高耐疲労合金
せん断パネル型制振ダンパー(2014年開発)
平鋼断面ブレース型FMS合金制振ダンパーの取付状況と詳細(2019年開発)
十字断面ブレース型FMS合金制振ダンパーの取付状況と詳細(2023年開発)

適用プロジェクト

愛知県国際展示場の西棟は、100mx100mの無柱空間の展示ホール、会議室を有する建物であり、大きな重量を100mの大スパンで支持する特殊な構造です。特に、建設地は南海トラフ地震で想定される震源に近いことから、余震も含めた多数回の大振幅・長時間地震動を受ける可能性を考慮し、事業継続性を維持するために耐震性能余裕度を大幅に向上させる必要がありました。
そこで、外周部に円形鋼管と充填モルタルで座屈拘束するブレース心材にFe-Mn-Si系耐疲労合金を使用(部材長約6m、最大分担荷重約2000kN)した平鋼断面ブレース型ダンパーを16本採用しました。

愛知県国際展示場および西棟展示ホールにおけるダンパー設置位置

中日ビルは、高さ約158mの制振構造建物で、長周期・長時間地震動対策に加え、複数回の大規模地震を受けても事業継続することを目的に、本ダンパーとともに、オイルダンパー、粘弾性ダンパー等の制振ダンパーを各階に配置しました。階高が高く地震時の層間変形が大きくなる7、8階には、十字断面ブレース型ダンパーを32本採用しました。エネルギー吸収性能の拡大によりダンパー本数が半減し、設計計画の自由度向上にも貢献しています。

中日ビル外観(撮影:エスエス名古屋支店 彦坂武徳)

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