Solution
スーパー台風も再現可能な建物の風応答シミュレーション
-Kazamidori®-
スーパー台風の影響を考慮した設計を実現

日本に上陸する台風は地球温暖化によって勢力を増しており、 今後「スーパー台風*¹」の増加が懸念されています。
そのため建物の設計においても、これまで以上に台風の影響を高精度に予測し、考慮することが求められます。しかし、台風のような「時々刻々と変化する風」を予測するには、従来の技術では多くの時間と費用がかかってしまうのが課題でした。

数値風洞「Kazamidori」は、「時々刻々と変化する風」を高精度に予測できる数値シミュレーション技術です。時間と費用の問題を解消し、中小規模のプロジェクトでも適用しやすくなりました。

  • 1 スーパー台風:米国の合同台風警報センターが分類している最大強度階級super-typhoon(130kts(≒66.9m/s)以上)の日本語訳

従来のシミュレーション技術とその課題

台風に強い建物をつくるためには、「風荷重(かぜかじゅう)」の評価が必要です。風荷重とは、建物が受ける風の力のこと。例えば窓ガラスの面積・厚さ、外装材、建物の形状などに影響します。

数値シミュレーション(定常解析によるもの)

ビル風評価や室内気流予測で広く使われている数値シミュレーション技術は、残念ながら風荷重評価には対応できません。それは、この技術が「平均的な風」を計算する技術のためです。風荷重評価には、「時々刻々と変化する風」とりわけ最も強い風(風圧)が計算できなければなりません。

風洞実験

現在、風荷重評価に広く使われているのは風洞(ふうどう)実験です。これは実際に模型をつくり、風を当てて風圧の測定をするもの。高精度に予測できる一方、模型製作には時間と費用が多くかかります。そのため、中小規模のプロジェクトで適用しづらいのがネックでした。

数値風洞Kazamidoriの特長

Kazamidoriは、数値シミュレーションと風洞実験の良さをかけ合わせた「数値風洞」です。

模型のいらない“風洞実験”

コンピューター上に市街地を再現し、数値シミュレーションで建物にかかる風荷重を算出します。「時々刻々と変化する風」を再現し、風の強さや流れを可視化します。模型製作にかけていた費用が削減できるため、中小規模のプロジェクトにも適用しやすくなりました。また、検討にかかる時間も短縮でき、設計初期段階から風荷重評価を組み込めます。

建物表面の風圧力と流線の可視化

過去の台風の再現も、将来のスーパー台風の想定も

気象データと連携したことで、特定の台風を再現できるようになりました。「◯年の台風◯号」といった過去の台風を再現できるだけでなく、今後増加が懸念されるスーパー台風による影響も想定でき、台風被害のリスク検証や影響予測も可能になります。

  

台風19号(2019年)上陸時の風の流れを再現(建物情報はZENRINの3D地図データを使用)

PLATEAUや気象観測データとも連携

国交省の3D都市モデルPLATEAUや気象庁の気象観測データと連携させることで、ユーザーが指定した日時の風速分布などが可視化できます。

  

2019年10月12日12時~13日12時までの風速分布の変化

風の諸問題に対応

風荷重の他、「風揺れによる居住性能」「不安定振動の有無」「建物周りの最大風速」なども評価できます。建物の形状を変えることで、強風時の建物の揺れを25%低減することも可能です。

適用例:建物周りの風速(建物形状の違いによる「風揺れ居住性能」をシミュレーション)

複雑形状の建物でも評価できる

模型が必要な風洞実験にとって、細かくて複雑な形状は苦手分野でした。Kazamidoriなら、細部に至るまで評価できます。

適用例:しゃちほこでシミュレーション