Solution
揮発性有機化合物で汚染された土地を原位置で
浄化
-温促バイオ®-
土壌・地下水汚染の浄化期間と浄化品質の問題を解決

揮発性有機化合物(VOCs)で汚染された土壌を浄化する場合、地盤中に存在する微生物を利用したバイオスティミュレーション※1等の原位置浄化※2工法も選択肢となります。しかし浄化に長期間を要するほか、地盤条件によっては、VOCsを浄化しきれず再汚染の原因となるといった浄化品質の悪化がみられる場合があるため、とくに土地売買等が伴う場合では高コストの掘削除去・場外搬出処理が採用される事例が少なくありません。

「温促バイオ®」は、従来の原位置浄化工法の課題である浄化期間と浄化品質の両方を解決する革新的なバイオスティミュレーションシステムです。浄化剤を混合した温水(以下、加温浄化剤)を注入することで、微生物の活性化し、浄化期間を短縮するとともに、蛍光トレーサー※3をモニタリングして加温浄化剤を均一に注入することで浄化品質の向上が可能です。

  • 1 バイオスティミュレーション:浄化剤を加えて地盤に生息している微生物を活性化させて浄化する技術
  • 2 原位置浄化:汚染された土壌・地下水を、掘削を行わずにその場で浄化すること
  • 3 蛍光トレーサー:地盤内の物質の移動を追跡するために使用する蛍光する染料

「温促バイオ」を適用するメリットや適用条件

  1. 浄化期間の短縮効果で、従来技術よりも土壌・地下水対策工事におけるCO2排出量の低減に寄与します。
  2. 従来のバイオ浄化技術では浄化期間の長さや浄化剤を均一に注入できないことによる浄化品質の悪化(再汚染の可能性)がネックとなっていた、深く広範囲に汚染物質が拡散した地盤の浄化において、加温浄化剤を均一に注入することで浄化品質を向上します。
  3. 建物を運用しながら浄化することが可能です。

「温促バイオ」適用イメージ

特長1  地盤を加温し、微生物分解に適した温度状態を創出し、浄化期間を短縮

加温浄化剤を地盤に注入し、地盤内を25~30℃に保つことで、土粒子に固着したVOCsが地下水中へ溶出しやすくなるとともに、微生物の活性化を図ります。これにより、国内の一般的な地盤中の温度である15~17℃で浄化する場合と比べて、浄化期間を半分以下に短縮します。

浄化促進のメカニズム
分解効果の比較(室内試験)
※ PCE:テトラクロロエチレン、TCE:トリクロロエチレン、
c-DCE:シス-1、2-ジクロロエチレン、VC:クロロエチレン

特長2  蛍光トレーサーを活用して、不均質な地盤でも加温した浄化剤を均一に注入制御ができ、品質が向上

蛍光トレーサーを用いることで加温浄化剤の拡散状況を見える化し、加温浄化剤の温度や注入量、注入位置や揚水位置などを制御することで、地盤内に均一に行き渡らせます。微生物が活性化するよう、地盤内の温度や浄化剤の濃度を調整することで、浄化不良や再汚染のリスクを低減します。

蛍光トレーサーを用いた制御システムの概要

温促バイオの主な受賞歴

2021 令和3年度日本水環境学会賞 技術賞
2021 第48回 環境賞 環境大臣賞
2022 令和3年度 土木学会賞(土木学会) 環境賞
2022 令和3年度 地盤工学会賞(地盤工学会) 技術開発賞
2023 第25回 国土技術開発賞 最優秀賞

実汚染サイトでの実証実験

実験概要

サイト概要 工場敷地
実験期間 20か月
汚染対象物質 VOCs
(PCE:テトラクロロエチレン、TCE:トリクロロエチレン、cDCE:シス-1,2-ジクロロエチレン、VC:クロロエチレン)
浄化対象範囲 面積 160 m²、対象土量 720 m³
対象地盤の土質 砂質土
対象範囲の端部に4か所の注入井戸と中央部に2か所の揚水井戸を設置。加温浄化剤及び蛍光トレーサーを対象範囲内に行き渡らせて微生物分解に適した条件を創出・制御。
  • 対象地盤断面図
  • 地下水及び土壌汚染の概要と井戸配置
  • 地下水濃度の経時変化(Z2地点)
  • 実験前後の土壌の状況(Y2地点)  実験前後の地下水の状況(Y2地点)

結果概要

実験開始約1年後に目標濃度(クロロエチレンの地下水基準と同等レベル)以下まで減少し、その後、約6か月にわたり、VOCs濃度の再上昇が無いこと確認しました。

より高濃度のVOCs汚染に対しては、
「バイオオーグメンテーション」との組み合わせで対応します

高濃度のVOCs汚染に対しては、予め分離・培養した特殊なVOCs分解微生物を注入する「バイオオーグメンテーション※4」との組み合わせで対応します。このVOCs分解微生物は国立大学法人名古屋工業大学が分離に成功したもので、通常のバイオスティミュレーションでは対応できない高VOCs濃度の環境下でも生息しVOCsを分解できる能力があります。本微生物は、「微生物によるバイオレメディエーション利用指針※5」の適合確認を取得し、安全性を確認しています。

「温促バイオ」との組み合わせ例

土壌浄化の可能性を拡げ、
汚染された土地の再生と利活用に貢献します

土壌浄化が困難な場合、土地の利活用が進まず、ブラウンフィールド※6化する懸念があります。「温促バイオ」は汚染された土地の再生と利活用の幅を大きく広げます。

「温促バイオ」の開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の戦略的省エネルギー技術革新プログラムの助成を受けて株式会社竹中土木との共同研究にて実施。
構成する要素技術の開発は、国立大学法人岡山大学及び国立大学法人横浜国立大学との共同研究にて実施。
「バイオオーグメンテーション」と組み合わせた技術は、環境省の「令和2年度 低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査(委託業務)」の対象に選定。
「温促バイオ」は、東京都の地下水汚染拡大防止技術評価委員会において『有害物質等で汚染された地下水の拡大を防ぐ先進的な技術』に認定。

  • 4 バイオオーグメンテーション:予め外部で培養した微生物を栄養剤等とともに土壌・地下水中に投入することにより浄化する技術。
  • 5 微生物によるバイオレメディエーション利用指針:微生物を利用した土壌浄化について、生態系等への影響に配慮した適正な安全性評価及び管理
    手法のための考え方を指針として示したもの
  • 6 ブラウンフィールド:土壌汚染の存在、あるいはその懸念から、本来、その土地が有する潜在的な価値よりも著しく低い用途あるいは未利用と
    なった土地

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