人流の「シミュレーション」

建築計画では機能諸室や空間の配置計画及び、空間同士を最適に繋ぐための動線計画が検討されます。
検討されたゾーニングや動線計画、その他の設計プランの説明には図面が用いられることもあり、専門知識が必要であったり図面から空間を想像しなければならない場面が少なからず発生します。
本システムでは専門知識を必要とせず様々な建物種別や人流の条件でシミュレーションでき、建物完成後の使われ方のイメージ、設計コンセプトや設計意図を直感的かつ具体的に共有することが可能となり、お客様との合意形成もスムーズに行われます。

人流シミュレーションシステム

本システムは、ゲームAIの機能を用いてエージェント(人)それぞれが考えて行動するマルチエージェント型のシミュレーションを採用しています。
これにより、シミュレーション内の人があたかも個性を持ち、周囲の状況に応じて行動を変えることで、「疲れて休憩する」「気に入ったお店を見つけて寄り道する」といった実際の人が判断し、自然に振る舞うような人流を再現・可視化できます。

また、ゲームエンジンをベースに有識者の知見を導入しやすい設計としています。
当社の人流に関する研究結果や開発成果をゲームAIのアルゴリズムとして再現し、仮想空間上で与えるパラメーター(変数)の調整やゲームAI(モデル)を切り替えることで、同じ設計プランを基に平時、曜日や時間ごとなどの軽微な条件設定変更による様々な利用シーンでのシミュレーションが可能となります。また、特定の建物種別(病院や学校など)や状況(災害時の避難など)に特化させたシミュレーションにて検証できます。
今後は業種を問わず幅広い知見を取り入れ続け、多様な建種・ニーズに対応できるシミュレーションの高度化・多様化を進めて行きます。

人流シミュレーションシステムのユースケース

展示施設における入退場シミュレーション

入場ゲートまでのアプローチデッキ幅や入口の開口寸法、展示物の設置位置など施設計画の合意に向けて、来場者の人流をシミュレーションしました。
既存施設の来場者の傾向を反映し、カップルや家族といったグループ構成や老若の世代等もシミュレーション条件として考慮しました。
通路幅やシミュレーション属性の傾向などを複数パターンで試行し、建物完成後の人流や混雑状況のイメージをお客様と視覚的に共有できたことでスムーズな計画の決定につながりました。

公共施設における社会実験への適用

一部廃道を見据えた歩行者中心とした空間整備検討において、パーク機能として駐輪場や休憩所、キッチンカーといった人が立ち寄れるスペースの設置が計画されています。
人流シミュレーションを行い、衝突や滞留が発生しやすいエリアの混雑などの潜在的なリスクを評価しました。
通常時やイベント開催によって一時的に通行量が増加した場合などのシーンにて試行しました。
駐輪場及び各種立ち寄りスペースの複数レイアウトパターンにおいて、歩行者と自転車との衝突の可能性や休憩所周辺にどの様な滞留が発生しやすいか等、エリアの持つ潜在的な特徴を可視化しました。