-防振浮床-
コンサートやスポーツ観戦では、観客が一斉に動くことで「タテノリ振動」が発生します。タテノリ振動は、建物内のみならず地盤を介して近隣の建物にも伝わり、不快な揺れを発生させる場合があるなど、影響範囲が広く対策が困難です。
問題解決には観客の足元で振動を抑えることが最も効果的であることから、従来にはない大規模で高性能な超低振動数タイプの防振浮床を開発しました。
防振浮床の概要
超低振動数タイプの防振浮床は、コイルバネ、粘性ダンパーを基本としたシンプルな構成となっており、従来と同じく1質点系の防振理論に基づいて設計します。
防振浮床の固有振動数を1Hz、減衰定数を10%、タテノリの動作ピッチを2~3.5Hzとした場合、主要なタテノリ振動は1/3~1/10程度に低減されます。
これにより、従来では困難であった居住地域での大規模な音楽イベントホールと、近隣住環境との共存が実現可能となります。
防振浮床の構成
防振浮床は重量のあるコンクリート床版(厚さ1.2m)、大型コイルばね、粘性ダンパーで構成されます。床版の厚みを1.2mとすることで、固有振動数を1Hzという低振動数にするとともに、タテノリ加振時の床版の振幅を小さく抑えます。
加えて、粘性ダンパーにより10%の減衰量を付与することで、日常使用時の床版上での居住性を確保(ふわふわ感を抑制)可能な、高性能な防振浮床を実現しました。
防振浮床の性能確認実験
本防振浮床の開発にあたっては、平面的に縮小した試験体(モックアップ)と、本設の防振浮床について、それぞれ多人数のタテノリ加振実験を実施しました。
モックアップでは32人、本設の防振浮床においては1000人超もの人員により、動作ピッチの範囲を2~3.5Hz程度とした加振を行い、いずれも設計通りの防振性能であることを確認しました。
適用プロジェクト
本防振浮床を適用した東京ガーデンシアターは、非常に軟弱な地盤上にあり、加えて住宅やホテルなどの住居用途に囲まれた居住地域内に位置するため、タテノリ振動が生じる音楽イベント施設としては、極めて厳しい敷地条件でした。
竣工後多数のライブコンサートが行われていますが、近隣からのクレームも無く、近隣住環境と共存できていることを確認しています。