地震時に建物がゆっくりと揺れることで、建物の安全だけでなく居住者の安心も確保します。
免震構造は、地震の際に建物が壊れたり家具が転倒する被害を劇的に減らし、居住者に大きな安心感をもたらします。
そのしくみ、耐震構造との違い、および当社独自の免震技術を紹介します。
水平方向に柔らかく変形する積層ゴムやすべり支承などの免震支承を建物の基礎部に設置し、建物を地盤から絶縁します。
建物に入力した地震エネルギーは、免震支承に併設するダンパーにより吸収し、建物の揺れを低減します。
耐震構造と比べ揺れの激しさが格段に低減されるため、構造体の損傷を防ぐだけでなく、地震後も建物機能を維持することが可能となります。
当社は国内トップクラスの免震建物の設計・施工実績を誇り、超高層建物から伝統木造建築の改修まで、お客様のさまざまなニーズにお応えする技術を提供しています。
超高層免震は当社が先鞭を付けた技術の1つです。2000年竣工の『パークシティ杉並和田』を皮切りに、これまでに数多くの住宅やオフィスを手掛けてきました。
超高層免震は免震支承の引抜き対策、風揺れ対策などに高い設計力・技術力が必要であり、当社がこれまでに培ってきたノウハウが有効に活かされています。
また1990年代から20年以上に渡り、当社独自の免震部材の開発も行っています。
『アイランドシティタワースカイクラブ』は、共通の免震人工地盤上に建つ3棟の超高層住宅を高さ方向3か所で空中庭園を介して連結した特徴的な外観の建物です。各棟と空中庭園の間に制振ダンパーを設置した免制振ハイブリッド構造を採用しています。
『梅田DTタワー 』はリニアスライダー、多機能オイルダンパーなど、当社独自開発の免震部材を大々的に適用し、建物3階の床下に免震層を設けた中間階免震の超高層オフィスビルです。
建物基礎部の免震層に加え、建物用途が切り替わるセットバック階などにもう1つ免震層を設けることで、建物により高い免震性能を与える技術です。 免震層の変形を2か所に分散させることで長周期地震などの巨大地震に対しても耐震安全性を確保するとともに、超高層建物で問題となる高層階のむち振り現象を抑え、さらにはセットバックによるねじれ変形の影響を低減することが可能です。
微振動を抑制しながら地震時の安全性を確保する「ビスカス免震®」
精密な製造装置は,地震の大きな揺れだけではなく,交通振動などの微細な環境振動も遮断する必要があります。
粘性体ダンパーを用いた竹中式ビスカス免震は、こうした高度なニーズに応えることが可能です。ビスカス免震は1980年代に開発した当社オリジナル技術を改良したもので,揺れの大きさに関わらず効果を発揮する特徴を生かし,最先端の生産施設に適用しています。
鉄道高架下の空間を快適に利用できる「吊り免振工法」
防音・防振・免震を融合し、安全で静かな空間を実現しました。
吊り構造による免震構造を採用し、建物および鉄道高架橋の耐震性能を確保すると同時に、ホテルに求められる静かな室内環境を鉄道高架下に実現しました。
本技術は東日本旅客鉄道と竹中工務店との共同研究開発技術です。
データサーバや重要機器を地震から守る免震床システムです。
庁舎やデータセンターなどに多数の適用実績を有する信頼性の高いシステムで、中小地震から大地震まで揺れの大きさに関わらず効果を発揮します。非常にコンパクトな機構を採用しており、床下に十分なケーブルスペースを確保することができるとともに、メンテナンスも容易です。
世界最大級の試験機を用いて大型積層ゴムの免震性能を確認しました。
免震建物に用いる積層ゴムは、大地震の動きを模した動的実験によって性能を確認することがとても重要です。
当社は、超高層建物に用いる直径1.3mの大型積層ゴムに所定の鉛直荷重を加えた上で、長周期地震動をはじめ様々な地震波を水平2方向に実速度で入力し、大地震時の挙動や安全性を確認しました。日本国内にはこうした実験を行う試験装置がなく、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)所有の世界最大級の試験装置を使用しました。
先駆的なこの取り組みは日本免震構造協会から高い評価を頂き、2010年度の技術賞<特別賞>を受賞しています。
積層ゴム支承の主要材料は輪ゴムにも使われる天然ゴム、時とともに硬く脆くなり切れてしまわないのでしょうか。 当社では1987年に竣工した当社初の免震建物『船橋竹友寮』で、実際に使い続けている積層ゴムを約10年毎に取り出して調査しています。取り出した積層ゴムは製造時と同じ試験を行って性能の経年変化を調査した後、切断して内部ゴムの物性調査を行っています。1996年、2008年の調査では、それぞれ10年、22年経った積層ゴムの性能に大きな変化がなく、ゴムがほとんど劣化していないことを確認しました。2016年現在、30年を経過した積層ゴムの経年変化を調査中です。
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1996年と2008年に実施。次回2016年を予定 |