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ソリューション

環境へのまなざし―サスティナブル

環境にやさしいエコ技術

本来伝統建築が持っていた「持続可能な」技術を生かし、古在の転用・再利用、解体・移築等を積極的に採用。
地熱利用、雨水利用、太陽熱利用等の環境配慮のエコ技術を付加した、新しい環境技術の提案をします。

祐天寺本堂・書院 免震改修

「祐天寺」とは?

祐天寺は、江戸中期からの長い歴史を有する寺院で貴重な文化遺産です。今回は寺院を地震災害から守り、未来永劫保存する事が求められました。
通常の耐震補強では地震力の低減は出来ませんが、免震では地震の力は通常1/3~1/5に下がります。建物の地下にコンクリートの連続ピットを設け、免震構造を設置、上部への地震の影響を低減させる事で、上部の木造建物の文化財の価値を損なう事の無い保存改修が可能となりました。
また、日本初の「2棟建物一体化免震」の実現となり、伝統建築のサスティナブル実績の先駆けとなりました。

本堂外観

本堂外観

書院外観

書院外観

文化を守る免震レトロフィット

既存建物の耐震性を向上させるために、建物下部または中間部に免震層を設置、免震層上部への地震力の伝達を低減させるものです。
通常の耐震補強には、建物内の各部位に補強部材が新たに設置され、建物の外観や使い勝手に影響が出ますが、「免震レトロフィット」の場合は、免震装置を建物下部に設置する事が出来るので、建物の外観を損ねず耐震性を向上させる事ができます。
また免震構造に改修する事で、建物本体の揺れが低減され、室内の家具や什器への影響が少なくなります。この点が通常の耐震補強と大きく異なり、「免震レトロフィット」の実績は、新築の免震建物に比較してまだ少ないですが、今後増加すると考えられます。

耐震改修イメージ

耐震改修イメージ

構造解析モデル

構造解析モデル

環境に優しい免震レトロフィット

わが国には、高度成長期に建設された建物を始めとする大量の構造物があります。これらの多くは現在更新期に来ています。
また旧耐震基準で建てられたため、耐震性が劣る物が多いと言われています。これらを従来のように解体して建て直せば、
大量の廃棄物が発生します。しかし免震レトロフィットで耐震性を確保し、解体せずに再利用すれば、廃棄物を減らすことができます。
地球環境に優しい工法です。

大地震時の免震効果

大地震時の免震効果

エコ技術を盛り込んだ免震レトロフィット

境内・お寺を利用されるお檀家さんのみならず、周辺住民・都市環境への配慮として、様々な省エネ対策を試みています。
伝統建築の風情を壊すことなく、地下の免震層や軒裏・屋根、建物周りの造園等に、最新のエコ技術が盛り込まれています。

太陽光発電パネル(瓦屋根の上にパネル設置)

太陽光発電パネル
(瓦屋根の上にパネル設置)

地熱利用(免震ピットの空間を活用、蓄熱材として自然石を利用)

地熱利用
(免震ピットの空間を活用、蓄熱材として自然石を利用)

ドレンチャー・ミスト(軒裏に散水ノズル設置、非常時の消火設備・省エネに活用)

ドレンチャー・ミスト
(軒裏に散水ノズル設置、非常時の消火設備・省エネに活用)

廃材の再生利用(境内のゴロタ石・不要瓦を雨落等の修景造園に再利用)

廃材の再生利用
(境内のゴロタ石・不要瓦を雨落等の修景造園に再利用)

免震装置

支承 直動転がりベアリング 52基(書院 23基+本堂 6基)
復元用ばね 積層ゴム 10基(書院 4基+本堂 6基)
ダンパー オイルダンパー 8基(書院 4基+本堂 4基)
免震装置
プロジェクト概要
建築主 宗教法人 祐天寺
建築地 東京都目黒区中目黒5-24-23
改修設計 エースコーポレーション株式会社
改修構造 竹中工務店
改修施工 竹中工務店
改修工期 2007.6~ 2008.4(書院)、2009.7~ 2010.3(本堂)
構造 木造(伝統軸組工法)(本堂:入母屋 唐破風付・瓦葺、書院:寄棟・瓦葺)
階数 地上 1階
建築面積 756.00㎡(本堂: 396.00㎡+書院: 396.00㎡)
延床面積 952.72㎡(本堂: 11.00㎡+書院: 8.50㎡)
建物高さ 8.20m
軒高さ 8.20m

 

専修寺御影堂保存修理

「専修寺御影堂」とは?
真宗高田派本山専修寺御影堂は、寛文6年(1666年)に建立、
昭和36年(1961年)に国の重要文化財に指定されています。
国宝・重要文化財指定の木造建造物の中で5番目の規模を誇ります。

専修寺御影堂保存修理

 

現代の技術で過去を未来へと繋ぐ

近年、歴史的建造物の保存修復が注目を集めています。
文化遺産に対する関心の高まりや、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきたことへの反省から、ストックを大切にしようとする動きが広がり始めました。1999年に行われた文化財建造物保存技術協会による調査の結果、専修寺御影堂は建立から330余年を経て雨漏りによる腐朽や基礎の沈下、部材の弛緩等、傷みが激しいため、国庫補助事業としておよそ8年の歳月をかけて保存修理工事が行われることになりました。

約200~300年に一度の半解体修理

修理はまず、軸組を残したまま小屋組・床組・縁廻り・造作材等が一旦解体されます。次に、柱の不同沈下や建物の傾斜の修正を行い、軒の垂下の原因となった構造的な欠陥を補強・改善した上で、各部材の腐朽・破損箇所が補修されます。最後に元通りに組立て直され、修復が完了します。
また、解体に伴っては詳細な調査が行われ、創建当時の形に極力戻すように復元が成されます。

専修寺御影堂保存修理
専修寺御影堂保存修理

今後の方向性

今後、国宝を頂点とした重要文化財や登録文化財等、歴史的建造物の保存修復工事は、増加していくものと考えられます。
しかし、専修寺御影堂のような重要文化財の保存修復には、極めて幅広く深い知識と技術が必要とされます。
古建築には古建築の、近代建築には近代建築の建てられた時代時代に合った知識と技術が求められ、同じ重要文化財でも専修寺のような木造古建築と他の近代建築では、求められる技術が全く異なります。
よって大切なのは、ひとつひとつの保存修復工事で得た知識と技術を蓄積し、伝承していくことなのです。

プロジェクト概要
建築主 (宗)真宗高田派本山専修寺
建築地 三重県津市一身田町
修理設計 (財)文化財建造物保存技術協会
構造 木造
階数 地上 1階
規模 桁行 9間(42.6m)、梁間 9間(33.4m)
一重入母屋造・向拝 3間(7.6m)、本瓦葺
高さ 27m