新しい建築生産のかたち
竹中新生産システムのコンセプト
竹中新生産システムとは
建設技能者不足が深刻化する中、改正建設業法「発注者義務としての適正工期確保(2020年10月施行)」、改正労働基準法「法定外労働時間の上限規制(2024年4月から建設業適用)」など、働き方改革による「建設業の魅力向上と生産力の確保」をめざす法制化が進んでいます。
こうした建設業界を取り巻く課題及びデジタル化社会を含めた将来の環境変化に対し、お客様ニーズに応える生産力及び建設サービスの提供をめざした建築生産変革の取組みを「竹中新生産システム」として展開しています。
この活動は2025年のめざす姿を設定し、2020年着工プロジェクトから順次展開しています。
特に施工段階での圧倒的な生産性向上を目指し、着工までのつくり込みと生産活動最適化(製作準備を含む協力会社の生産性向上と高効率な施工管理)を活動の柱とし、BIM及び先端デジタル技術の効果的活用を組み込んだプロセス改革を主な取組み内容としています。
取組みのポイント
プロジェクト特性を踏まえた施工段階における生産性向上の課題の明確化を図り、その課題解決へ向けた着工までのつくり込みを活動の柱としています。
当社がこれまでに蓄積したノウハウに加え、将来対応も踏まえた以下の取組みをポイントとしています。
生産性向上効果の高い施工計画(最適構工法、工程計画など)の早期検討(設計段階~着工前)
特定のBIMソフトに依存しないオープンBIM方式での関係者との効果的な連携
着工までの主要な施工BIMモデルの作成による生産準備
BIMモデルを活用した施工計画・施工図の作成並びに協力会社の製作図及び製作へのデータ展開
現地工数の削減をめざしたオフサイト化推進(施工のフロントローディング)
最先端のデジタル技術・建設機械・ロボット等の効果的な生産性向上技術の適用
竹中新生産システムの基本業務プロセス
設計区分(設計施工一括、設計施工分離など)の発注形態によって、施工計画のつくり込みやオープンBIM方式での生産準備の着手フェーズは異なりますが、基本業務プロセスのフロー・コンセプトは同じであり、様々なマーケットニーズに対応する仕組みとして展開を図っています。
竹中新生産システムの基本業務プロセス
施工計画のつくり込み
プロジェクト特性を踏まえた最適な構工法の採用計画と仮設や工程計画を含む施工計画の着工までのつくり込みが、計画的な発注と工事運営に最も重要な取組みとなります。
最適化された施工計画は4Dシミュレーション等の形で見える化し、着工までに工事関係者と施工計画の合意を図ります。
シミュレーションによる最適な施工計画の早期検討
オープンBIM方式での効果的な生産準備
設計から生産の全てのプロセスで横断的にBIMを展開し、生産性向上を図るには、設計者・施工者・協力会社がそれぞれのニーズに応じたBIMソフトを活用することが不可欠であり、BIMのメリットを最大化するポイントです。
当社は、特定のBIMソフトに依存しない国際的なフォーマットであるIFC形式での共有・調整を軸とした「オープンBIM」の考えを採用しています。設計者・施工者・協力会社はそれぞれの目的に適したBIMソフトのデータによる調整が可能で、BIMモデルの効果的な活用展開を図ることができます。
基本業務プロセスに関係者間のモデルデータ連携による整合性確認を組込み、各フェーズにおける設計・生産調整及び段階的な生産準備を行います。着工後も特定のBIMソフトに依存しない形で、詳細レベルの取り合い調整や作業所の施工管理におけるBIMデータ活用が可能です。
オープンBIM
基本的なデータフロー
施工のオフサイト化
建設現場で行っていた加工や組み立てを工場等での製品化やユニット化に置き換え、現地での工程と工数を最小化するオフサイト化を進め、現地施工の生産性を大幅に向上させます。
プロジェクト工程全体の最適化と合わせ、BIMデータ等を活用した「もの決め工程」のマネジメントを強化します。
プレキャストコンクリート等の工場製品化された躯体部材、建築と設備の複合ユニット化、施工BIMモデルを用いた材料(設備配管や軽量鉄骨下地材等)の実施寸法での工場プレカット等が代表的なオフサイト化の例です。現地工数の最小化は建設プロセスでのCO2排出量削減にも大きく貢献します。
施工のオフサイト化
オフサイト化の事例
基礎フーチングのフルPCa化
竹中式杭頭半剛接工法と組み合わせ、複雑な鉄筋工事を排除。圧倒的な省人化・工程短縮。
屋上パラペットのPCa化
工場製作(若しくはサイトPCa)のPCaを先行して設置することで、工程・安全・品質も向上。
間仕切壁の軽鉄材のプレカット
BIMで詳細寸法リストを作成し、プレカットした材料を部屋ごとに搬入。現地加工が不要。
設備機械室の配管ユニット化
設備配管寸法のモジュール化
スプリンクラーの樹脂配管ユニット化
デジタル施工技術の適用
デジタル施工技術の進歩は目覚ましく、将来の建築生産プロセス変革及び生産性向上の鍵を握っています。
現在では、BIMデータや施工空間のIoTデータ等の広がりと共に、建設現場での部材取付や自動計測、施工管理、建設機械・ロボットの自律化等へと適用範囲が広がっています。
ベンチャー企業等の効果の高い技術と自社開発技術の活用シーン別の最適な組み合わせを図り、将来を見据えた施工現場におけるデータを活用したものづくりの姿を実現します。
関連ソリューション
デジタルデータを活用した施工PDCAサイクル
効果的なデジタルツインの実践
BIMデータをもとに着工前と着工後の各プロセスで目的に応じた効果的なデジタルツイン※による事前検証や現地確認を進めています。
計画・製造・施工・検査の各サイクルでのシームレスなデータ環境構築とデータドリブンな業務スタイルを確立させ、建設プロセスの見える化とプロジェクト関係者の生産性向上を図ります。
デジタルツイン:現実空間にある情報をIoT等で集めて仮想空間で再現したり、現実空間にデジタルの仮想空間を重ねて検証したりする「デジタルの双子」の概念
デジタルでつなぐ建築生産プロセス
竹中新生産システムを支える基盤
将来を見据えた業務全体のデジタルプラットフォーム(クラウド環境でのデジタル業務ツール、データ及びICTインフラ)の構築と共に、BIM及び先端デジタル技術を効果的に活用し、着工前の施工計画のつくり込みと工事期中の作業所マネジメントが出来る人材育成に取組んでいます。