新しい建築生産のかたち
モデルプロジェクト
竹中新生産システムの取組みを推進するためにモデルプロジェクトを定め、今後当社がめざす設計~生産~FMに至る基本業務プロセスにおける様々なチャレンジと効果の検証を行っています。モデルプロジェクトとして、当社の静岡営業所、岡山営業所の建替計画を選定し、RC造及びS造における大幅な生産性向上を目指した基本業務プロセスの実践・検証及び各フェーズにおけるBIMの効果的活用等を検証しています。
この2つのプロジェクトは、国交省の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に採択され、国交省BIM標準フローに対する実践・検証も併せて行っています。
モデルプロジェクトにおけるBIMモデルフロー
主な取組み項目(設計及び生産)
(設計、工事監理)
設計形状や環境条件最適化のためのシミュレーション
設計モデルと見積システムのデータ連動
BIMを活用した確認申請
データを活用した工事監理
(生産)
オープンBIMでの施工モデル・製作図連携
BIMモデル承認(施工図)の確立
構造・仕上・設備でのデジファブ推進
データを活用した施工管理(BIMを現場の日常管理に活用)
竣工後の施設管理へのBIMデータ活用
静岡営業所建替計画(RC造における新たな建築生産プロセスへの取組み)
プロジェクト概要とテーマ
テーマ |
「RC造の特徴的なデザインの最適化と設計から生産・FMまでシームレスにつなぐBIM及び新生産システムのめざす姿の実現」 |
柱頭免震ピロティー構造と大スパン曲面船底形状のRCスラブ・天井が特徴
工期 |
2020年12月~10月末(11カ月) |
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構造 |
RC造、3階建て、柱頭免震構造 |
延床面積 |
360㎡ |
生産段階の主な取組み内容
「オープンBIM」による協力会社参画でのBIMモデルを活用した「もの決めプロセス」の実現
設計(建築、構造、設備)、生産、各専門工事会社の目的に応じたBIMソフトを活用し、国際規格のIFCファイル形式を介したモデルの重ね合わせにより、整合調整と互いのデータ連携を実現しました。これにより着工迄の詳細施工計画がスムーズに行われ、BIMモデル承認を経て、手戻りなく各専門工事会社の製作モデル・製作図、そしてBIMデータを活用したデジタルファブリケーションへ展開しました。
BIMモデルを活用したRCの複雑な形状の鉄筋、PCā部材、型枠のデジタルファブリケーション
RC躯体モデルからの躯体主要部材のデジタルファブリケーションへのデータ活用について、協力会社と連携し、下記のデータフローに基づく実施展開を図りました。
BIMモデルを活用したデジタル検査、BIMモデルの施工現場への展開
作成されたBIMモデルを活用し、施工前のデジタル配筋検査や複雑な部位のVR検査による納まり確認を行いました。着工前にデジタルで配筋検査やモデル承認を完了させることで、現地施工時にはモデル通りに施工出来ているかの確認に専念できます。
更には、実施BIMモデルを活用し、鉄筋工事の職人さんが複雑な部位の納まりを簡単にQRコードで呼び出し、モデル確認できる仕組みを展開しています。
設計及び施工情報のFM(施設運営 Facility Management)への展開
施設運営段階で必要となるデータについて、建物維持管理会社と一緒に設計段階で打合せを行い、竣工後の施設運営におけるBIM活用プラットフォームである当社のFMプラットフォームでのデータ活用方針を定めました。竣工後のBIMデータ活用を効果的に行うためには、目的とデータ活用の基本方針をプロジェクト初期に定め、関係者間で合意しておくことが重要となります。事前に定めた基本方針に基づき、工事期中では、必要な施工記録や設置機器等の属性をBIMモデルと関連させて整理し、竣工後の施設運営に活用します。
FM段階のBIM活用の方針確認
隠蔽部の360度写真や3Dスキャンでの記録
FMモデルへの設備機器等の属性情報埋込み
岡山営業所建替計画(S造における新たな建築生産プロセスへの取組み)
プロジェクト概要とテーマ
テーマ |
「S造における徹底的なBIMデータの活用・展開と工業化 (オフサイト化)のめざす姿の実現」 |
S造のシンプルな構造と角度を変化させた外装ルーバーが特徴
工期 |
2021年1月~6月中旬(6.5カ月) |
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構造 |
S造、2階建て |
延床面積 |
770㎡ |
生産段階の主な取組み内容
協力会社参画でのBIMモデルを活用した鉄骨のもの決めプロセスとデジタルファブリケーション
鉄骨BIMモデルの承認プロセスとモデル作成に関する当社と協力会社の役割分担を明確にし、部材発注から鉄骨製作につなげるBIMデータ連携の仕組みについて、今後の鉄骨造プロジェクトへの展開を見据え、以下のフローを実践しました。
徹底的なオフサイト化推進による省人化
オフサイト化の推進による生産性向上(現地加工減による労務工数の大幅な削減)は、現地での段取りや手間仕事を減らし、現場を熟知した職長とメンバーによる平準化した作業を可能にします。これは生産性向上のみならず安定した品質確保に繋がり施工現場における重点管理が可能となります。当プロジェクトでの主なオフサイト化の取組みを以下に示します。
タブレットを活用した最新情報共有と施工管理への展開(BIMモデルの現場活用)
これまでBIMモデルを建設現場において活用するためのソリューションは、現場のニーズに十分に対応できるものが無く、その効果は限定的でした。当プロジェクトでは、当社が技術開発連携をしているRendra社のクラウドサービス「StreamBIM」を活用し、BIMデータや各種図面(PDF)の最新情報管理や当社社員と職長との工事進捗確認のコミュニケーションの円滑化も含めたデータを活用した施工管理の姿に取組んでいます。この効果の把握と運用面の改善を通じ、今後は他のプロジェクトへの展開及び建築主や設計者との調整やコミュニケーションにも活用を拡げていく予定です。