長野

日亜化学工業諏訪技術センター

Completion Year2016
Project Story
豊かな環境に呼応する
「空に浮かぶ」研究所

長野県の諏訪湖を望む自然豊かな敷地に、2016年11月、日亜化学工業諏訪技術センターが完成しました。研究者の閃きをサポートすることで、イノベーションを促進する研究所を目指して建てられました。

お客様の願いはイノベーションの促進

LEDの分野で世界トップレベルのシェアを誇る日亜化学工業。創立60周年事業の一環として計画された、LED・半導体レーザーの先進的な応用製品の開発拠点となる技術センターです。八ヶ岳連峰の山裾に位置し諏訪湖を望む自然豊かな立地を活かし、イノベーションに貢献する研究環境を目指しました。

まず取り掛かったのが用地の選定です。光学・精密機器産業が集積され、他企業との連携によるイノベーションに期待がもてる長野県諏訪地方の複数ある候補地の中から一緒に選定させていただきました。

自然豊かな環境にたたずむ研究所

研究者をシームレスにつなぐ空間

次に、空間構成と動線計画です。研究開発機能をワンフロアに集約し2階に配置することで、どこにいても諏訪湖を一望できる良好な環境を最大限確保しました。湖側から順に高さを変えながら「コモンスペース」「執務スペース」「実験室」を配置しました。諏訪湖との距離感に応じて、自然光の入り方や視線の高さ、照明方法を変化させ、湖側は開放的でリラックスできる空間、山側は閉鎖的で集中できる空間としました。また各スペースを廊下レスでつなぎ、閃きを妨げずシームレスに行き来できることで、研究者の創造をサポートしています。

諏訪湖を望む開放的なコモンスぺ―ス

PCとプレストレスを駆使した設計施工

プレストレストPCを2階床の梁に採用し、建物を空中に浮かせたデザインとしました。約30mスパンを無柱で実現したピロティ空間は災害時の地域の避難拠点としての役割も担っています。

一方で、1月の平均気温がマイナス1.3度という寒冷地ならではの課題もあります。寒冷地ではコンクリートの強度が発現するまでに時間がかかり、次の工程にかかるのが遅れがちです。そこで、柱や梁などの部材を工場で製作し、現地で組み立てるプレキャスト工法を採用しました。工場で製作するためには早めに仕様を決定し、発注する必要があります。着工前から設計・施工・調達などの担当者が連携を図ることができる、設計施工一貫のメリットが生かされました。

コモンスペース、実験室とシームレスにつながる執務スペース

担当者の声

大阪本店設計部 興津 俊宏

設計を進めるにあたり、諏訪湖のほとりを歩きました。波がなく穏やかでとても気持ちが良いんです。湖畔の砂浜、周辺の緑、遠くの山並み、そういった自然と建物をつなげたい。湖のほとりにいるような空間をつくりたい。そんな想いで設計しました。

通常は敷地が決まっていることが多いのですが、今回はその選定から関わったことで、諏訪湖や背面に広がる山裾までの大きな環境をデザインに取り入れることができました。また潜在自然植栽を考慮し、周囲の自然の流れを遮らない一体的で豊かなランドスケープは、研究員の方だけでなく、周辺住民の方にも楽しんでいただきたいです。

大阪本店設計部 興津 俊宏

長野・山梨地区FMセンター 金庭 久樹

現場で打設した基礎部のコンクリートが凍らぬよう養生し、夜通しジェットヒーターで温めたことを昨日のことのように思い出します。在来工法だけでなく、各種プレキャスト部材、プレストレストの梁、鉄骨などとハイブリッド構造のため、接合部の納まりが難しかったですが、工程を守ることに努めました。弊社には、よりよい作品をつくるために様々な技術を用いて具現化する組織力と熱意が備わっていると思います。

今回のプロジェクトでは、お客様が徳島、設計が大阪、施工が長野、施工支援が東京と関係者が各所に分かれていました。様々なITツールを駆使し、コミュニケーションを図るとともに、円滑な合意形成に努めました。

長野・山梨地区FMセンター 金庭 久樹

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