多国籍チームでの設計経験を土台に、
自由で寛容な空間づくりを

井ノ口万美恵|建築設計(大学院工学研究科建築学専攻修了)

2009

入社・新社員研修

2010

大阪本店 設計部配属

2012 - 2014

立命館いばらき
FUTURE PLAZA

2014 - 2017

ヨーロッパ竹中
ドイツ支店

コマツジャーマニー
テクノロジーセンター

ネクセンタイヤ
ヨーロッパ
テクニカルセンター

ドイツ駐在中に、2つの新築建物の設計を担当しました。

  • ・若手が海外で経験を積むことを目的とした社内制度があり、2014年から2年半、デュッセルドルフにあるドイツ支店に駐在し、主に2つの新築建物の設計を担当しました。

2017 コマツジャーマニーテクノロジーセンター
Komatsu Germany Technology center

  • ・最初に担当したのは、「コマツジャーマニーテクノロジーセンター」という大型掘削機械メーカーのオフィスでした。既存工場内に分散していた設計室・事務室を1カ所に統合することのシナジー効果を最大化するため、中央にアトリウムを設け、各階平面と階段経路をS字形状とし、歩く度にさまざまな人やシーンに出会う場をつくりだしました。
  • ・また、ヴェルナーゾーベック事務所と協業し、アトリウムでは年間を通して自然エネルギーを活用し、風の通り抜ける健康的な空間となるように検討を重ねました。
  • ・2つ目は「NEXENタイヤドイツテクニカルセンター」という韓国企業の欧州初のR&D施設です。創業家出身の社長より、欧州における今後のビジネス拡大を象徴するような、勢いのある建築を求められました。外装は全周にわたってタイヤのトレッドを想起させる、一筆書きの力強い表現で包み込み、外装全体でコーポレートアイデンティティを表現しました。建物の中核には、レセプションで数百人が集まることのできるおおらかな気積のアトリウムを設けました。

2018 ネクセンタイヤヨーロッパテクニカルセンター
NEXEN Tire Europe Technical Center

国籍なチームの中で、日本で学んだ知識を相対化することができました。

  • ・ドイツ支店の建築設計は10数名の小規模な組織で、日本人駐在員はヨーロッパ統括の上司と私の2人でした。アイディアをシンプルなまま実現しやすい環境で、自身で批評性を持つことがより必要とされますが、海外ならではの醍醐味だと思います。
  • ・入社後5年間、大阪本店で仕事の仕方をおよそ学んだ後に海外赴任したので、風土や建築材料、商習慣、社内コミュニケーションの取り方など、あらゆるものが日本と異なることがわかり、日本で学んだ知識を相対化できたことは、自分の成長にプラスになったと思います。
  • ・例えば、ヨーロッパでは設計と施工の分離発注が一般的なため、「設計施工一貫のよさ」を建築主にうまく伝える難しさがありました。同時に設計施工のよさを改めて実感する機会となりました。
  • ・ドイツ支店のスタッフは多国籍で、かつ様々な職場を経て当社に在籍している方も多く、プライベートなことも話題が豊富で、多様性のある興味深い職場環境でした。

プライベートな時間は、建築や現代アートを満喫しました。

  • ・ドイツからヨーロッパ各地に飛行機で容易にアクセスできるため、週末には各地の新旧の建築を訪ねました。2年半で、15カ国・70都市・およそ500の建築を見て回りました。中でもアルネ・ヤコブセンの「デンマーク国立銀行」には圧倒され、ヘルツォーク&ド・ムーロンの新館を含めた「テート・モダン」の、身体が反応してわくわくしてしまう空間には驚きました。また、かしこまらずにパブリックスペースをうまく利用している場面に多く出会い、日本とはまちのつくりや歴史・風土にさかのぼって環境が違うものの、日本でもこういったマインドが育つといいなあ、と羨ましく思いました。
  • ・また、ドイツは現代アートが盛んな国なので、日常生活や旅行の際に自然と触れる機会が多かったです。なかでもコンテンポラリーダンスのピナ・バウシュの作品に出合い、その表現の自由さに虜になりました。幼少期からバレエが趣味でしたが、その後は自らももっぱらコンテンポラリーダンスを踊るようになりました。

ドイツ支店建築設計のメンバーと                                          帰国後パフォーマンス

より多角的な視点で、新しい価値創造を考えています。

  • ・帰国後は、寺社付属の美術館や京都の老舗問屋新社屋の基本計画、大学の付属施設の基本・実施設計などを担当しました。また、京都の五つ星ホテルの計画では、海外デザイナーとのコミュニケーションに、ドイツでの経験が直接的に役に立ちました。
  • ・また、少し先の未来を見据え、建築を通した新しい価値の提供に挑戦しています。社内の新価値創造チームでは、これまでにない技術やサービスを考案中です。阪急阪神不動産の「LIVING STYLE 2025」という未来の集合住宅を考えるプロジェクトにも参加し、住まいが一住戸で完結するのではなく、建物共用部やまちにもつながることで、くらしがより豊かになるというコンセプトを提案しています。

Living style 2025 コンセプトイメージ
©イスナデザイン(一瀬健人・野口理沙子)

2017

大阪本店 設計部配属

子育てをしながら、自由で寛容なまちに貢献できる実践をしていきたいです。

  • ・第一子の育児休業から復職して数カ月が経ちました。育児休業中は、日々人間の機能を少しずつ身につけていく娘を見守る時間は大変楽かったのと同時に、彼女の人生が楽しいものになるように手助けをする責任も感じました。
  • ・復職後は、当社設計部の夫と子育てを折半して、定時で退社してお迎えに行く日と、しっかり働く日とを使い分けながら仕事に取り組んでいます。また、同期入社女性の多くが、出産後も子育てをしながら当社で働き続けていることは、とても心強く思っています。
  • ・海外赴任や育児休業などイベントの多いキャリアを経て、上司も現在7人目(入社2年目以降)です。さまざまな環境を経験したからこその広い視野を持って、建築主や社会の課題にしっかり応える作品を、周囲を巻き込みながら今後もつくり上げていきたいです。
  • ・まちに接続するプロジェクトに巡り合った際には、完成後の運営やマネジメントの議論にも積極的に参加し、まちがもっと自由で寛容になることに、建築設計を通じて貢献したいと考えています。