北海道の環境と共生する建築

建築設計|北海道地区FMセンター

FEATURES01

人と自然がやわらかくつながる

北海道地区FMセンターは亜寒帯気候における非住宅木造のプロトタイプを目指したオフィスです。20世紀型の均質なオフィス空間ではなく、自然環境を適切に内部に取り込むことでムラを許容するオフィス空間に挑戦しています。具体的には内部に微気候空間を作り出す温熱入れ子構成(※1)を半透明のファサードで包み込み、新しい中間領域(亜寒帯気候の縁側)を創出することで、人間が本来持っている五感を刺激し健康的に働けることを意図しています。

※1 温熱入れ子構成:空間的に入れ子をつくり、2つの温熱環境が生まれる構成


構成ダイアグラム

自然環境を取り込む亜寒帯気候の縁側

FEATURES02

亜寒帯気候が浸透する微気候空間

亜寒帯気候のウェルネスオフィスを目指し、内部に自然環境と人工 環境のあいだのような微気候空間を作り出すため、温熱入れ子構成でプランを構成しています。入れ子の内側は一年を通して安定した温熱環境となり、外側はシミュレーションを用いながら南西面の中空ポリカーボネートから光と熱を開口部から風を適切に内部に取り込み、地下水を用いた輻射型のラジエーターを設置することで、夏冬心地良い亜寒帯気候の新しい中間領域である微気候空間を創出しています。また、北海道大学との協業による竣工後のモニタリング調査では、微気候空間を積極的に使用している人ほど、ワークエンゲージメントが高いという結果が出ました。

温熱入れ子構成 断面ダイアグラム

温熱入れ子構成

微気候空間を実現する設備
通常、不特定多数を概ね満足させる一定の温度を目標として設備設計を行いますが、微気候空間では、この基準を適用することは多大なエネルギーの浪費につながる可能性があると考えました。そこで、今回は快適指標SET*=15~31℃というある程度幅のある範囲を目標に設定しました。
夏は窓開閉による自然換気、冬は日射によるダイレクトゲインを最大限活用したパッシブデザインを行い、空調設備には、微気候空間の形成に必要な自然(熱・風)の受け入れと親和性がある冷暖房ラジエーターを採用しました。人体と直接熱の授受が可能となり、自然の変化によるムラが生じても、快適性を確保できる計画としました。

FEATURES03

北海道の森を循環させるダブルティンバー®

地球温暖化と北海道林業の課題(※2)に対し、道産木材を道内加工することを前提に一般流通材(120角)を用いた非住宅木造を目指しました。柱、梁、筋交いを二重化する木架構システム「ダブルティンバー®」を開発することで、住宅スケールよりも広い3.64m×4.55mのグリッドを構成できるようになり、オフィス等の非住宅に対応可能なスパン構成が実現しました。
当システムの採用によって、大断面集成材で計画した場合と比較して40%程度のコスト低減が可能となりました。更に鉄骨造で計画した同規模の建築(材料と運搬)と比較した場合、躯体工事のCO2排出量を70%程度削減することができます。

ダブルティンバー®

3.6m×4.5mグリッド

北海道の森林とサプライチェーンの課題から一般流通材(120角)を使った構造(ダブルティンバー®)をデザインすることで、羊蹄近辺のカラマツを森町の工場で設計からの一貫した3Dデータから直接加工するデジタルファブリケーションを行い、地産地消(加工を含む)となるローカルファブリケーションを構築しました。

北海道の森林課題から生まれたダブルティンバー®による構造モデル

北海道のローカルファブリケーションによる木構造

FEATURES04

藻岩山と豊平川の潜在自然植生によるランドスケープ

この山鼻エリアは豊平川の扇状地と近傍の藻岩山に挟まれる位置です。ランドスケープデザインはこの地域の潜在植生(藻岩山と基調樹種と豊平川の河川植生)を主体としました。また、道路側の既存塀を撤去することで地域に対して積極的に開く構成とし、かつてここ一帯が山鼻屯田兵村として開拓され、農地と住宅地がセットであったことを起源としたファームを南側に配し、種まきイベントや収穫祭など地域の人が参加できるイベントを展開し、街とのつながりを試みています。

潜在自然植生の再生

配置図

本井 和彦

垣田 淳