都市の中に「森」をつくる

ランドスケープデザイン|飯野ビルディング「イイノの森」

FEATURES01

都市の中に緑のネットワークを構築

計画に際し、皇居から日比谷公園につながる東京都心の広大なみどりを、虎ノ門・愛宕山エリアから東京タワー方面へと拡張する起点となることを意図しました。

竣工後、愛宕山界隈や周辺街区等の再開発により豊かな緑地が整備され、緑のネットワークは成長を続けています。

FEATURES02

日比谷公園から立体的につながるみどり

都市スケールのみどりから建築の内部空間と連続する身体スケールのみどりまで立体的に配置しています。

地上レベルでは、都市の緑のネットワークの起点を担い、日比谷公園と連続するイイノの森と、ピロティとともに快適な歩行空間を提供する沿道のシラカシ並木を配しています。
低層階には、オフィスロビーや会議室と連続する屋上緑化を行っています。特に6Fのルーフギャラリー前には、日比谷公園や大手町の高層ビル街を借景としたアートガーデンを設えました。
地上140mの屋上にも、神社とその参拝スペースを設け緑化しています。

⽴体的な緑のつながりダイアグラム

FEATURES03

都市の「森」の生育を支える緑化技術

敷地の北側に位置するイイノの森は、約3,000㎡の公開空地です。地下に店舗や駐車場を有するため、地上部ではあるものの、空地の約80%は建物上の緑化となっています。

建築・構造・設備との綿密な協業により、合理的な荷重条件設定と設備スペースを確保した上で、森を育むための必要土厚を確保し、樹高8.0mクラスの高木層を筆頭に、生物多様性に配慮した複層林(樹高や樹齢の異なる樹木で構成され、樹冠の部分が何層にも分かれている林)を創出しました。

竣工から8年が経過し、高木層は10mを越え、メインアプローチに木陰を落としています。

竣工直後の2015年に実施した生きもの調査では、計画時に誘致目標とした鳥類10種、チョウ11種のうち、それぞれ6種、4種が確認されていますが、5年経過した2020年調査では、それぞれ8種、7種が確認されたほか、特に昆虫類の確認種数が飛躍的に増加し、多くの生きものが棲息する森となっています。

「イイノの森」 南北断面図

「イイノの森」東⻄断⾯図

FEATURES04

人を惹きつけるアートと自然の共生

「芸術を支える」という社会貢献活動の一環として、建築の内外合わせて7つのアート作品を設置しています。

事業主と共にアートプロポーザルを企画・実施し、コンセプトの立案から設計、製作、現場での納まりまで、設計者がアート作家の協業者として総合的に関与し、その場所の環境と呼応したアート作品の完成度を上げることに寄与しました。

レアンドロ・エルリッヒ『The Pond』

平⽥五郎『空を⾒るために −イイノの森のためのミナレット−』

屋外に設置されたアート作品は、自然との共生がコンセプトの根底にあります。環境の映し込み、人工物が創り出す疑似自然が生み出す驚きなどを試みており、独特の手法で自然の存在に気づくきっかけを与え、人々を惹きつけることができます。

FEATURES05

設計意図通りの緑地に成長させるため
竣工後も継続して関与

竣工引き渡しに合わせて、設計意図を維持管理に活かすための引き継ぎ書『植栽維持管理ガイドライン』を作成し、事業主ならびに植栽維持管理者と共有しました。

最適な緑地の成長管理のため関係者とのコミュニケーションを継続し、環境認証の取得や緑地関連の表彰*など社会から緑地の価値が認められる成果につながっています。

植栽管理作業の中で種やドングリから生えた実生(樹木の子ども)を採取し、バックヤードで保管・育成したものをオフィスワーカーへ配布したり、東京都等が主催するセミナーや見学会にも協力するなど、事業主により森を活用した様々な活動も行われています。

人、街、生きものそれぞれに価値を提供する[都市の中の「森」づくり]はこれからも続きます。

設計意図を維持管理に活かすための引き継ぎ書『植栽位置管理ガイドライン』

*ABINC(「いきもの共生事業所Ⓡ」)認証 2015年、2018年更新、2021年更新
ABINC特別賞 2016年 (以上、一般社団法人いきもの共生事業推進協議会)
江戸のみどり優良緑地 2018年(東京都)
ちよだ生物多様性大賞 入賞 2021年 (千代田区)