

ひと中心のまちなかへ
ランドスケープデザイン|茨木市文化・子育て複合施設 おにクル + 周辺道路
FEATURES01
「2コア1パーク&モール」
2023年11月にオープンした茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」は2つの駅の中間地点に位置し、どちらからも歩いてアクセスできる距離にあります。駅(コア)、市役所と中央公園エリア(パーク)、それらをつなぐ商店街を含めた道空間(モール)による「2コア1パーク&モール」の都市構造が茨木市により位置づけられています。両駅の中間の新たな目的地や中継地とすることで、中心市街地の回遊性を向上し、歩きたくなるまちを実現することを目指しています。
2コア1パーク&モール
FEATURES02
茨木の人と自然をつなぐ
敷地は市内を南北に貫く元茨木川緑地と都市計画公園に接しています。また、茨木市の北部には北摂地域の里山が今も残り、地域自然資源のポテンシャルの高い場所にあります。
北摂地域の里山を取り込んだテラスには、茨木の地域の植生に根差した植物を植栽しました。また、工事にあたり、敷地内にあった樹木を保存・移植するとともに、上流域の里山から採取して育てた苗を植栽に活用することで、地域の自然とのつながりを感じられる計画としました。
「おにクル」をとりまく地域資源のポテンシャルマップ
北摂地域の里山景観を取り込むテラス
茨木の地域の植生に根差したテラスの植栽
FEATURES03
「立体的な公園」による まちなかの居場所づくり
周囲のエリアと1階建物の間になだらかな地形の芝生広場を設け、高低差を解消することで誰でもアクセスして過ごすことができます。
壁や柱を極力なくした内部空間は吹き抜け空間「縦の道」でつなぐことにより、テラスと連続する「立体的な公園」をつくり、まちなかの居場所づくりを実現しました。
周囲のエリアとの高低差を解消し、誰もがアクセスできる広場
屋内外の居場所が連続する「立体的な公園」
FEATURES04
みんなでつくる、ともに育てる広場
「おにクル」は、元市民会館を含むエリア一体の活用を目的に行政と市民の対話から検討が始まりました。
市民が「育てる広場」をコンセプトに、茨木市により多くのワークショップが開催され、市民との対話が行われてきました。その積み重ねをもとに、設計・施工段階でも引き続き市民参加型のワークショップを企画・運営し、一人ひとりが建物や広場の使い手として関わることができる場づくりを行いました。
市民の手で育てた苗木を広場内に植栽するワークショップ
市民による建物・広場の使い方を検討するワークショップ
FEATURES05
試しながらつくる、つくりながら考える
まちなかの居場所づくりの実現に向け、隣接する道路「市役所前線」を廃道し、車から人のための空間へと変化させていくための社会実験を企画・運営しました。「おにクル」のオープン後、通勤や散歩などの日常的な利用に加え、ホールでのコンサートなどのイベント時には多くの人々が集まり、「おにクル」の周辺の道路もにぎわいをみせています。道路の快適な通行と滞在の空間を提供し、エリア一体のまちの魅力をさらに高めていくことを狙いとしています。
社会実験では、通行止めにした「市役所前線」に市民参加によるイベントスペースやカフェなどの滞在場所を設けました。そこで得られた人の流れのデータとアクティビティの状況を計測・分析し、「市役所前線」の廃道後の土地利用に向けたデザインへとフィードバックしました。実際に試しながらつくり、そしてまた考えるプロセスを繰り返すことで、道路空間で「このように過ごしたい」、「こんな使い方もできる」といった可能性を広げることができました。
社会実験での音楽イベント
社会実験 配置図
人流計測をもとにした動線と滞在場所
道路で立ち止まって休憩する人、知り合いに出会い、立ち話をする人など、通行の過程で滞在の行為が生まれる状況を観察することができました。また人流調査の結果、人の流れに近接する位置に滞在行為を受け止める空間があることで、訪れる人の時間や使い方の幅を広げる可能性があることが分かりました。
これらの分析をもとに、「市役所前線」を、人の通行(リンク)と滞在(プレイス)双方が関連しあう、車から人のための計画へと導いています。
社会実験での滞留場所の試行
FEATURES06
歩きたくなる、ひと中心のまちなかへ
「おにクル」完成後も茨木のまち全体にまちなかを楽しみ、使いこなすための考え⽅やものの⾒⽅が広がるよう、「茨⽊まちなかスタイル」という市民向けコンセプトブックを作成しました。
これまで茨木市が実施したまちなかに関わる市民アンケートやワークショップから、茨木のまちなかの課題や、「こんな風にまちなかを使えるといいな」、「こんなまちなかになったらいいな」といったイメージを、茨木らしい幸せや豊かさを共感できるまちなかの様子として具体化し、10の「茨木まちなかスタイル」としてまとめました。
「おにクル」で実現したまちの居場所づくりが契機となり、歩きたくなる「ひと中心のまちなか」を目指したまちづくりへとつながっています。
「茨木まちなかスタイル」コンセプトブック
10の「茨木まちなかスタイル」
茨木市文化・子育て支援施設おにクル 設計:伊東豊雄建築設計事務所・竹中工務店共同企業体
市川 雅也
野間 慎司
高根 一晃
伊藤 翔
橋岡 佳令