脱炭素化・ウェルネスを飛躍的に高める
中温水による冷媒自然循環放射パーソナル空調

設備設計|オプテージビル / SHINKO AIR DESIGN STUDIO

FEATURES01

快適な環境を実現する
放射パーソナル空調

近年のオフィスワークスペースに求められる大切なキーワードの一つに「健康な空間づくり」があります。なぜなら快適な環境は、人の知的生産性に大きな影響を及ぼすからです。
こうした健康に配慮した環境のことをウェルネス環境と呼び、健康性を向上させるために、設備設計で特に配慮が必要となるのは温湿度、気流に対する設計です。

そこで私たちはオフィスのウェルネス環境実現に向け、放射パーソナル空調に着目し、研究を進めています。
知的生産性に大きな影響を及ぼす「健康で快適なオフィス」つまり、ウェルネス環境実現のためには、人体への熱的なインパクトが小さいことが大切です。放射空調は人体を取り囲む天井・壁・床の表面から熱を伝えて温度をコントロールするため、吹出気流によるドラフトを感じることはありません。このため人体への負担が少ない温熱環境を作り出すことが期待できます。

一方、人は暑がりや寒がりの個人差があり、快適感が異なります。
多くの人たちが共存するオフィス空間では、ひとりひとりが満足する快適感を得られるパーソナル環境の必要性が高まっています。
「もう少し涼しくしたい」といった個々の要望に対して、座席ごとにパーソナルファンを設置し、執務者自身が好みに合わせて気流の強さを調整することで、きめ細い対応をすることができます。

「放射パーソナル空調」は、健康で快適な環境を提供し、ウェルネス環境を実現しています。

FEATURES02

中温冷水を利用した
冷媒自然循環システム(VCS)

一般的に広く採用されている対流式空調システムは、室温を22~26℃に保つため、冷房では7℃以下の冷水、暖房では45℃以上の温水が必要となり、このような低温水・高温水を作るには多大な空調エネルギーが必要になります。
一方、放射空調では放射を行う面は20℃程度まで温度を上げても十分にその効果を発揮できるため、室内温度により近い温度(中温)の冷水や温水でも快適な環境を実現することが可能です。中温とすることで空調熱源の効率が向上するため、エネルギー消費を大幅に削減することができます。

さらに、ポンプ等の熱搬送動力を必要としない当社独自の冷媒自然循環システム(VCS:Vapor Crystal System)を組み合わせることで、省エネルギー効果を一層高めることができます。
冷媒自然循環システムは、冷媒の相変化に伴う比重差・圧力差によって熱を搬送します。冷房運転の場合、凝縮器では冷媒を冷却・液化して自然落下させ、空調機で室内空気と熱交換して冷媒が加熱・蒸発して自然上昇させます。暖房運転ではこの逆のサイクルを発生させ、冷媒が自然に循環します。
これまでは主として低温冷水を利用していましたが、中温冷水にも適合可能なシステムとして開発し、放射パーソナル空調と組み合わせることで、空調エネルギーの大幅な低減を実現しました。
中温冷水を利用した冷媒自然循環システムは、放射パーソナル空調以外にも様々な空調方式との組み合わせが可能です。

FEATURES03

快適性と脱炭素化の両立を実現

実験により、従来の対流式空調に比べ、等価温度(※1)は約1.8℃低下、人体の顕熱損失量(※2)は約22%改善され、放射パーソナル空調の効果的な冷却作用を確認しました。
運用段階におけるアンケート調査では四季を通じて高い満足度が得られていることを確認できました。

※1 室内の快適性を示す指標。例えば「室温が28℃で扇風機を使ったとき」に「気温23℃で扇風機を使わないとき」と同じ快適さを感じた場合、「等価温度は23℃」ということになる
※2 冷房によって冷却された人体の発熱量(顕熱:温度変化によって生じた熱エネルギー)

当社設計施工のオフィスビルにおいて、中温冷水を利用した冷媒自然循環システム(VCS)と放射パーソナル空調を導入した結果、一般的な熱源、空調方式に比べて空調消費エネルギーを約45%削減でき、高い省エネルギー効果を実証しました。
また本システムの導入により、大規模オフィスビルであるオプテージビルにおいて、ZEB-Readyを実現しました。