変化を受け入れる有機的な構造計画
構造設計|リバーホールディングス両国
FEATURES01
相互に密接に関連する形態の変化を構造計画に織り込む
⾦属のリサイクル・廃棄物処理を事業とするリバーの本社建替え計画では、有機的な形状の壁を外周に配置することで、建物内に光を柔らかく取り込み、⼤きな吹き抜けも計画されました。
建物壁やアトリウムの位置・形状は、執務者の⾏動分析や⽇射・気流のシミュレーションを繰り返しながら決定するため、設計を進める間に刻々と形態が変化します。
構造設計にとっての設計条件とも⾔える形態の変化に対して、柔軟に適応できるような構造計画を⽬指しました。
FEATURES02
⽣物の多様性を構造計画に織り込む
クモは周囲の⽊々などの形状を活かしながら、常に同じ⼿順で巣を組み上げています。これにヒントを得て、壁と吹き抜けの位置という初期条件をもとに、内部の構造を合理的に決定するアルゴリズムを構築することで、形態の変化に容易に対応できるようにしました。
建築・構造・設備それぞれの分野ごとにシミュレーションを⾏い、結果を共有するというサイクルを繰り返すことによって、最適な形状を模索しました。
構造計画では、柱と梁のパラメトリックスタディを繰り返し⾏うことで、架構の合理化を図りました。
FEATURES03
敷地と架構の特徴を耐震計画に織り込む
敷地は川が近いために地盤が軟弱です。建物を⽀えるために杭を打っているため、地震が発⽣すると外周の壁が杭を⽀点に回転しながら変形します。この複雑な挙動に対して壁同⼠をつなぐ梁(境界梁)をパラメトリックスタディにより配置して、建物全体が⼀体性を保ちながら抵抗するように計画しました。
FEATURES04
⼒の流れを構造のディテールに織り込む
最大で8本の梁が集中する柱と梁の接合部は、通常の配筋方法では鉄筋が密になりすぎて実現ができません。そこで、梁から柱への力の伝達を仲介する接合部分(キャピタル)を柱頭に設け、梁の鉄筋のレベルを統一してキャピタルに定着させることで実現しています。
鉄筋コンクリートの梁の端部は力の流れを可視化するため隣接する梁と緩やかに連続する形状としています。直仕上げとし、階段は吹き抜けの形状に合わせて弧を描くように鉄骨を加工しています。吹き抜けを囲むカウンターテーブルはガラス手摺に取りつけた棒鋼で支えることにしました。
FEATURES05
有機的な表現を構造の形態に織り込む
構造的に合理的な案が執務者にとって快適な空間になるとは限りません。壁・柱・梁の有機的な配置を、働く⼈の視点に⽴って考えて、模型やVR(バーチャルリアリティ)を活⽤し、体感しながら構造のディテールに反映しました。
川村 聡
技術研究所
鴨下 直登
車 創太