想定外を想定する

構造設計|読売テレビ新社屋

FEATURES01

巨大地震が発生した時にも、
放送を継続する

放送局として第一に求められたのは、「どのような大規模災害が発生した時にも放送を継続可能とする安全性」でした。インフラの冗長性や浸水対策をはじめ様々な角度からのBCP対策が求められ、なかでも地震時の安全性は最重要課題とされました。
想定外の地震動として、防災拠点同等の地震波(L2告示波の1.5倍)に対する安全性、同時に長周期長時間地震動(東南海・南海地震)や上町断層JSCA大震研波を用いての安全性について検証を行う中、着工6ヵ月前の設計最終段階で熊本地震が発生しました。
そこで、想定をはるかに超える地震動として、震度7を記録した熊本地震の前震と本震を連続させた地震動を入力し、免震建物の弱点として指摘されることもある"フリングステップ"と呼ばれる足払い的な地面の動きに対しても、安全であることを確認しました。

熊本地震(出典:国土地理院撮影)

地震動の速度応答スペクトル

時刻歴応答解析結果 (層間変形角)

FEATURES02

揺れない“電波塔“

電波を生駒山に届ける"電波塔"としての機能も要求されました。3-7階の低層部は大平面のクリエイティブ工房、8-17階はコンパクトな本社機能オフィス、その上にアンテナが載ります。都市部では、大規模な低層部の上に小規模な高層部が載る建築が少なくないですが、そのような基壇形状の建物では、高層部において上階ほど加速度が大きくなる「むち振り現象」が発生します。
その対策として、基礎免震に加えて低層部と高層部の切替位置に制振ダンパーを設け、高層部の揺れをダンパー無しの時に比べ40%低減し、屋上アンテナの揺れを抑えると共に、高層部オフィスでの居住性を高めました。

構造軸組図

免制振ハイブリッド構造による揺れの抑制

FEATURES03

安全安心と賑わいを生み出す

大阪城公園とOBP(大阪ビジネスパーク)をつなぐ立地を生かし、平常時はまちに対して"賑わい"を提供します。日常から市民に慣れ親しまれた"賑わい"の場は、地震等の災害時には“防災活動の拠点”として機能します。放送局ならではの社会貢献に対して、構造設計ならではのアイデア・工夫が求められました。
4つのスタジオ、ホール、1・2階の“賑わい”空間を避けて、低層部分にバランスよくRC造コア耐震壁を配することで、耐震性能を確保しつつ免震効果を高めました。また、ダイナミックなメガ架構を組み込むことにより、高層棟直下1階部分には円形エントランスロビー(防災拠点)を、外部にはピロティ空間(歩行者空間)を実現しました。

構造ダイアグラム図

構造ダイアグラム図

災害時の防災活動拠点となる円形エントランスロビー

放送局の来訪者を迎え入れる安全なピロティ空間

佐分利和宏

前川元伸

熊野豪人

内山元希