着心地のよい服のような建築を実現する構造
構造設計|ZOZO本社屋
FEATURES01
ひとつ屋根の下で働く一体感をつくる吊り屋根
ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの本社では、仲間の顔が⾒え「ひとつ屋根の下」で共に働く⼀体感を⽣み出せるオフィスを⽬指しました。そのため、柱等の障害物のない最⼤スパン27.4mの吊り構造屋根で⼤きな空間を覆っています。天井⾼さを2.0〜8.0mに変化させ、ひとつの空間の中に、パブリックな空間とパーソナルな空間をグラデーション状につくり出しています。⼤きな布のようにゆったりとした曲線で空間を覆う天井は、断⾯が30mm×30mmの不燃⽊を3層構造に編み、⼈びとをやわらかく包みこみます。その内側には不燃段ボールの空調換気ダクトや吸⾳材を⼊れて通気性や⾳環境を良好にし、ZOZOらしい「着⼼地のよい服のような建築」としました。
この「着⼼地のよい服のような建築」を実現するために、⼤きな布のように垂れた27.4mスパンの薄い屋根を実現することが構造設計者に求められまし
た。そのためには多くの技術的課題があり、建築設計者との対話を重ねながら解決を図りました。
FEATURES02
布のような曲線を吊り屋根で描く
⼤スパンを梁構造とすると部材が⼤きくなり、軽やかな屋根になりません。そこで吊り構造とすることで、梁成350mmの軽やかな屋根を実現しました。
屋根形状を通常のカテナリー曲線とした場合、⽔勾配と建物の⾼さ制限の条件を同時に満たそうとすると、⼗分な垂れ下がり(サグ)が確保できず吊り構造の効果が⼗分に発揮されないという課題があ
りました。そこで、吊り材にH形鋼を使⽤し、曲げ剛性をもつ半剛性吊り屋根としています。その上で、曲線に緩急をつけることでサグを⼤きく確保し、吊り構造の効果を⾼めています。
FEATURES03
⽣地に張りを与える⽀え
吊構造は、吊材に⽣じる⽔平張⼒を⽀える必要がありますが、内側に引張られる⼒(スラスト)は、⽔上側に設けたキャンティレバー柱と、⽔下側に設けた斜材(バックステイ)で⽀えています。
今回のケースでは建物が敷地いっぱいに計画され、⽔上側にバックステイのためのスペースを⼤きくとることが難しい状況だったため、⾼い位置に強固な仮想地盤⾯を作り、そこにキャンティレバー柱を配置するという⽅法で⽔平張⼒を⽀えることとしました。これにより、プランニングの⾃由度を⼤幅に改善しています。
FEATURES04
3枚の屋根を縫い合わせ、
マリオン兼⽤部材ではためき防⽌
地震時には、短冊状の3枚の吊り屋根が⼀体となって振動する必要があります。そこで、それぞれの屋根を覆う階段状の架構でつなぎ、⽔平⽅向の動きを⼀体化させました。また地震時の垂直⽅向の変位について、3枚の屋根のはためきを防ぐため妻⾯に間柱「ストリングポスト」を追加し、挙動を安定させました。この間柱は、カーテンウォールのマリオンも兼⽤し、すっきりとした開⼝部のデザインに寄与しています。
設計施工 | 竹中工務店 |
共同設計 | 中村拓志&NAP建築設計事務所 |
主要用途 | 事務所 |
階数 | 地下1階・地上2階 |
主構造 | 鉄骨造、鉄筋コンクリート造 |
基礎形式 | 杭基礎 |
構造形式 | 耐震構造 |
架構形式 | ブレースを有するラーメン構造 |