伝統建築の継承と新たなハレの舞台の創出
伝統建築|三嶋大社
FEATURES01
近世と現代を融合させた寺院の改修
伊豆国の一宮である三嶋大社の舞殿。時を重ねた風格を活かしながら、古式の神事や結婚式などの祭事に対応するために新たな機能を付加して、時代の要望に応える改修計画です。
FEATURES02
本来の舞殿に寄り添う意匠
舞殿の四周に廻した柱の屋内側に5種類の建具幅を持つ木製引戸や矩形に加工したヒノキの無垢材を段積みした正面の階(きざはし)を新たに追加しました。引戸は全開放時に引き込んだ障子が一枚に見えるように調整し、建具の存在感を軽減することで本来の舞殿の姿を忍ばせるよう工夫しています。また階は段板の取り合いにヌスミを入れることで軽さを演出し、また一般的に行われる古色塗装を行わず、長い年月をかけて既存の部材と馴染ませることを意図しました。
FEATURES03
伝統的な形式と耐震技術の融合
舞殿の意匠性を保持しながら耐震補強を行うため、挟み込み長押の手法を考案しました。柱頭部は米ヒバ材の長押を内外両側から挟み込んでボルト固定し、柱脚部は柱間に分割して設置されていた足固めを通し材である足固め貫に交換することで、柱との半剛接ラーメンを強化して架構の耐力を高めています。
屋根裏の小屋組は雲筋交や火打ちを追加して剛性・耐力を高め、垂木・母屋・棟木・隅木の接合部には、ひねり金物や羽子板金物で脱落を防止しました。また床下の既存の基礎に内側から増打して補強を行うなど、外観には表れない部分で耐震性能を高めました。
FEATURES04
伝統的な格天井と現代照明の融合
室内照明は祭事の際に必要な現代的機能の一つである。
暗がりの境内に幻想的で奥深い「光の間」を創り出すような現代性を演出するために、格天井の懐に点光源を埋め込み、新設した鴨居の上にライン照明を設えました。
照明器具の存在感をなくすことで歴史ある舞殿の姿を引き立てながら、空間における人のふるまいをさりげなく演出するよう工夫しています。