都市開発デザイン|WITH HARAJUKU・渋谷PARCO
・MIYASHITA PARK

渋谷NORTHは、渋谷駅の北側から原宿駅南側の個性的なストリートが集中するエリアです。 このエリアで2019 - 2020年にオープンした「WITH HARAJUKU」「渋谷PARCO」「MIYASHITA PARK」について、「ストリート」という視点から文化と建築の関係を考察します。

FEATURES01

街路を連続させる

WITH HARAJUKUの敷地は従前、ヴィンテージマンションの大規模な建物にふさがれ、周辺の路地は行き止まりとなっていました。今回、建物中央に周辺街区と接続する半屋外の公共的街路空間「パサージュ」を設け、東西8mの高低差を持つ地形を活かして周辺路地とつながり、光と緑に溢れた立体的な街路空間を構成しています。
渋谷PARCOは、スペイン坂を上りきった延長に区役所通りへつながる広場を設け、建物外周を巡りながら10階までつながる「坂の道」を接続しました。この立体街路に沿ってテラスや路面店を展開し、渋谷の人の流れや賑わいを8階の劇場、10階屋上庭園へと連続させています。
渋谷区立宮下公園は、1966年に駐車場の上に公園を設置した東京初の屋上公園として整備されました。従前の宮下公園は道から切り離され、周囲から園内が見通せず、歩行者は息をひそめ足早に通る場所で、今回耐震性の課題から建替えとなりました。MIYASHITA PARKは、駐車場を地下に埋設することで、オルガン坂や明治通り、キャットストリートなど、渋谷 – 原宿間の各結節点とシームレスにつながりました。

FEATURES02

街路を立体化する

表参道や原宿駅からWITH HARAJUKUのゲートをくぐると、自然光が降り注ぐパサージュから、吹抜け空間を回遊して地下2階レベルの竹下通りやブラームスの小径へとつながります。西側には明治神宮の広大な杜を展望でき、東側は原宿の街並みにスケールを合わせたテラスが階段状に展開し、周辺の路地の緑へとつながります。
渋谷PARCOは、坂と通りから生み出される渋谷ならではの界隈性を立体化し、道のネットワークを屋上庭園までつなげています。これまでの店舗と劇場にオフィスを付加したまちづくりにより、新たな賑わいを創出して、光と緑、様々なアクティビティが交錯する都市の公園 = PARCOとなり、新たな文化と情報を発信しています。
MIYASHITA PARKは、渋谷と原宿の間を立体的につなげる街路状の建築を創出して都市公園を再生させています。新たな立体街路は、これまでの空白地帯を、路面店や屋上公園、変化に富んだ回遊空間、情報発信拠点へと変貌させました。光と緑に溢れた全長330mの屋上公園には、スケートボードやボルダリングなど渋谷らしいスポーツを楽しめる施設やカフェ、芝生の広場があり、さまざまな世代の人々に新しい体験や憩いの場を提供しています。

FEATURES03

街が育んできた「ストリート文化」を連続させる

今回の渋谷NORTHエリアにおける3つの建築の建替えでは、地域で育まれてきた多様なストリート文化をいかに建築で活性化させて都市の構造を変革するかを課題としました。
いずれも、一般的な効率最優先のアプローチとは異なり、都市に接続した立体的な道の建築となることで、点から線、面へと地域全体の回遊性と界隈性を高め、新しいまちと体験を創造する試みです。
3つの建築は、街路を立体化して取込むことにより、ストリート文化のインキュベーターという「道の役割」を継承し、街を進化させることを目指しています。渋谷NORTHならではの魅力ある歩行者回遊空間のネットワークを拡張し、若者にとどまらないあらゆる世代を惹き付けて親しまれ、新しいストリート文化を生み出す駆動力となっています。

宮島照久

垣谷伸彦

関谷和則