都市開発デザイン|あべのハルカス/てんしば
第3極としての賑わいをみせる「天王寺・あべの地区」 |
出典:yahoo混雑レーダー2020.10.31.18:30
大阪都市部は、梅田を中心とした「キタ」と、難波・心斎橋を中心とした「ミナミ」の2極構造と言われてきました。今後、大阪が激しい国際的な都市間競争に勝ち抜き、選ばれる都市になるために、キタとミナミだけではなく、広域な大阪都市圏全体が、それぞれのエリアの地理的、歴史的、文化的特徴を活かした開発により魅力を発信していく必要があります。私たちは、都市再生特別措置法のスキームを活用して都市機能の高度な集積を実現した「あべのハルカス」と、官民連携で天王寺公園を芝生広場を中心としたにぎわいの場に再生した「てんしば」の2つのプロジェクトにより、「アベノ(天王寺・あべの地区)」を第3極として活性化させ、大阪を2極から、個性のぶつかり合う多極的な都市構造へと導くきっかけとなることを目指しました。
FEATURES01
Pin
ーまちにピンを立てるー
2014年、高層ビルが林立する「キタ」でも「ミナミ」でもなく、「アベノ」の地にPinを立てるように高さ300mの日本一の高さの「あべのハルカス」が誕生しました。まちの新たなランドマークは、百貨店、オフィス、ホテル、美術館、展望台といった今まで不足していた都市機能を充足し、日本一の高さという話題性とその集客力によってアベノに新たな求心力をもたらしました。上町台地の上に突出した高さで立つビルは、周囲に高層建築が少なく、全方位から眺めることができ、見る方向によってシルエットが異なる特徴から、都市の中で自分の位置=addressが確認できる「道しるべ」として機能します。一本の超高層ビルが、立地する地域を活性化させると共に、広域の都市圏に対しては距離感とスケール感を与え、都市に明快な視覚的な形態を与える存在となりました。
FEATURES02
Node
ー人の流れを活性化させる接点ー
人の動線も物流動線も、既成のネットワークを切断・新調するのではなく、街の特徴を継承・発展するようにNodeを形成し、活き活きとした人の往来を実現させました。
FEATURES03
Link
ー広場が結ぶ新しい環ー
あべのハルカスに隣接する「てんしば」は、2015年、25,000㎡の天王寺公園のエントランス部を多目的に活用できる芝生広場を中心とした賑わいの場として、官民連携で再整備したものです。都心の喧騒の中、広く水平に拡がる芝生広場は、非日常の興奮と日常の心地よさが重なった新たな都市生活の場を創出し、地域の人々にも観光客にも愛される新たなパブリックスペースとして生まれ変わりました。大きな芝生は「天王寺動物園」の前庭であると同時に、「天王寺美術館」や「あべのハルカス」の前庭でもあり、それぞれの施設は空地を介して強く連結され、通天閣が立つ新世界エリアともつながる新たな「Link=環」を生み出しています。
「あべのハルカス」と「てんしば」の2つのプロジェクトは、相互に作用し、Pin ― Node ― Linkという都市開発的な方法により、都市の視覚的な形態(イメージ・アビリティ)を高め、「アベノ」を大阪第3極として発展させました。さらには大阪を2極から個性豊かな多極化した都市構造へと再編を促し、人口減少社会の中で大阪都市圏をより魅力溢れる都市へとアップデートする革新的な都市戦略なのです。
あべのハルカスは、私鉄最長の500kmの鉄道ネットワークを有する近畿日本鉄道のターミナル駅「大阪阿部野橋駅」直上に建つ、百貨店、小劇場、美術館、先端医療施設、大学、オフィス、ホテル、展望台など多様な機能が集積した、高さ300mの超高層複合建築である。鉄道ネットワークのNode(結節点)に高密度に集積した都市活動は、偶発性と相乗性を加速させ「持続可能かつ競争力ある都市的状況」を創り出しています。
てんしば (2015)
北側の道路を挟んであべのハルカスの足元に広がる。かつてブルーテントが立ち並んでいた公園は、子供が駆けまわる明るく晴れやかな都市のパブリックスペースに生まれ変わりました。
通天閣 (1956, 2015)
戦争のため解体された初代通天閣に変わり、民間の人々の出資により再建された二代目通天閣は、当時東洋一の高さ91mでした。天に通じる高い建物という思いと共に、今日に至るまで時代を越え大阪のシンボルとして存在しています。2007年には国の登録文化財に指定され、2011年にはサインのLED化、2015年には外観を維持しながらの免震化、さらに天井壁画の復刻や屋外展望台の設置等、時代の変化に合わせて様々な魅力を発信し続けています。
米津正臣