宇宙生活におけるQOL(生活の質)向上を目指して


近い将来、多くの人々が宇宙に住む時代がやってくる。宇宙で建築をどのように計画し、施工し、快適に生活するかを考える。


01宇宙建築の時代が来た

近年、有人宇宙開発が大きな盛り上がりを見せています。
これまでの宇宙開発は国家主導でしたが、民間企業や非宇宙産業が参入し、技術開発のスピードが加速しています。アポロ計画以来、54年ぶりとなる人類の月面着陸計画(アルテミス計画)に始まり、バルーンによる宇宙旅行、民間宇宙ステーション建設、宇宙ホテル、月周回旅行など、実現を前提とした多くの計画が進行しています。近い将来、心身ともに強靭な選びれぬかれた宇宙飛行士だけでなく、多くの一般人が宇宙に長期滞在する時代がやってくるでしょう。

1990年代の当社火星基地構想

02宇宙QOLの向上に向けて

宇宙空間での生活は過酷です。一歩外に出れば空気もなく、苛烈な太陽光や放射線が降りそそぐ世界です。宇宙では、まずは安全に生存することが最優先です。宇宙にものを打ち上げることに非常にコストがかかるため、今までの宇宙ステーションは宇宙飛行士の我慢を前提とし、快適性は二の次の「生きるため」の住空間でした。より多くの人がより遠くの宇宙でより長期間滞在するであろう未来には、宇宙建築においても高いQOL(生活の質)が考えられた生活空間が重要になると考えています。例えば、当社ではこれまで、「食」の質も重要なQOLととらえ、宇宙での生野菜栽培の実現を目指し国際宇宙ステーションでの実証実験や月面農場の計画を進めてきました。

2021年の当社月面農場計画案

03Takenaka Space eXploration(TSX)の設立

2023年、宇宙建築に熱い想い持つ当社設計者・研究者を中心に部署横断で、これからの宇宙建築を検討する宇宙建築タスクフォース(TSX: Takenaka Space eXploration)を設立しました。
月面探査最初期のベースキャンプとなるような建物から、多くの人が居住しコミュニティが形成されるような大規模空間まで、そこに住む人々の快適な生活を中心とした宇宙建築の計画・研究・開発・設計を大学等と共同で行っています。

月の縦孔での滞在開始用ベースキャンプ(図版提供「東京大学佐藤淳研究室」)

04未来のまちづくりヘ -ルナタワー

TSXでは、未来の月面コミュニティの礎になるルナタワーを構想しています。
ルナタワーとは、月の竪穴からそびえ立つ100mを超える鉛直構造物です。月面にある竪穴およびそこにつながる洞窟に居住施設を建てる様々な計画がある中、ルナタワーは月の暗い洞窟内に太陽光を取り込んだり、エレベーターや展望台、アンテナ塔として月に住む人々の生活を支えます。そして、そのシンボリックかつ月面において異形な姿は、母なる樹として月に住む人々の精神的な拠り所にもなります。

ルナタワーから広がる月面生活イメージ模式図

月の竪穴からそびえ立つルナタワーと地球

05ルナタワーの仕組み

月面にタワーを構築するにあたり、どのようにタワーの構造体を運搬するかが課題となります。最小限の大きさで材料を運搬し組み立てることを考えました。
ロケットのフェアリング(荷物スペース)の直径4m高さ4mの円筒形に最大直径4mのルナタワーの構造体となるCFRP製リングをぎっしりと詰め込みます。この月に運搬したリング4つで正四面体のリングトラスを作り、それを2つ合わせることで鼓上の安定した基本ユニットを組み立てます。それを立体的に組み合わせ、さらに鉛直方向へ積み重ねることで100mを超えるタワーを月で建設します。

関連サイトリンク
社外HPフロンティアのページ https://www.takenaka.co.jp/solution/future/02/
技術研究所「宇宙・フロンティア」のページ https://www.takenaka.co.jp/rd/space-frontier/index.html
宇宙生活でのQOL向上 https://www.takenaka.co.jp/solution/future/space/

田中 匠
(名古屋支店 設計部)

佐藤 達保
(大阪本店 設計部)

松岡 竜也
(東京本店 設計部)

内海 洋一
(大阪本店 設計部)

天野 千裕
(大阪本店 設計部)

内山 元希
(大阪本店 設計部)