時代の変化に応じた
可変性のあるビックプレート
明治安田生命新東陽町ビル
生命保険会社の事務センターと研修所、研修用宿泊施設の複合施設である。都内に分散した事務・配送・研修機能の集積を行うことにより、施設運営・管理の効率化、最適化を行い、約5,000人が入居する事務拠点の新しい環境を整備することを目的とした。住宅とオフィスが混在する地域環境と、事務・配送・研修の機能上の関係性とスペースの補完性、最大規模の部署が必要とする執務スペースと部署レイアウトに対するフレキシビリティの追求という観点から、これらの機能に対応したスペースを縦積みとした上で、できるだけ低層で、1フロアの面積を大きくとった平面計画とし、中央にアトリウムと外部吹き抜けを持った、ほぼ100m×100mの基準階形状の低層建物を選択した。
オフィススペースの空間性―空間の強度
約100m角のオフィスフロアの外周に分散して空調機械室と階段、エレベータなどのサービスリングを配置し、その内側に奥行約30mの執務スペース、さらにその内側に40m角のアトリウムと、アトリウムに面した執務スペースのコミュニケーションエリアとしてのナレッジリングを設け、中心に17m角のガラスの箱状の外部吹き抜けを約6度振って配する多重構造の平面計画とした。ロの字状の執務スペースは1フロアを4分割し1/ 4階(1,200mm)ずつステップアップする、階で切れることがない螺旋状に繋がる3次元的で流動的な「スパイラルフロア」とした。このスパイラルフロアによりシームレスな部署レイアウト計画が可能で、組織変更や人員の増減に対し高いフレキシビリティを持つと共に、中央の吹き抜けとの合わせ技で、100m角の広大なフロアでありながら全体を通視でき、スペースと組織、双方における全体の中での自分の物理的かつ組織的な位置の認識が可能である。
中心のアトリウムは、光と風を豊かに取り入れる外部吹き抜けを囲むガラスカーテンウォールと、それに巻き付き、スパイラルフロアを繋ぐフライングスロープ、スパイラルアップしていく執務スペースと二重のアクティビティを形成すると同時に、光と風を豊かに取り入れ、吹き抜けを中心に人が動き、施設全体の一体感を高める空間を目指した。
執務スペースは28.8mの大スパンであるが、直天井でコンクリート下面を現しとしたプレビーム梁と、新たに考案した楕円鋼管柱の柱列で構成した。全体のスペース構成と構造システムにより表出した空間性とその強度は今回の計画の新たな目的のひとつである。
Information
- 所在地
- 東京都江東区東陽2-2-11
- 建築主
- 明治安田生命保険
- 主要用途
- 事務所・研修所・宿泊施設
- 工期
- 2009年11月~2011年11月
- 敷地面積
- 30,081.77㎡
- 建築面積
- 14,768.45㎡
- 延床面積
- 96,911.48㎡
- 階数
- 地下1階、地上12階、塔屋1階
- 主構造
- 鉄骨造(柱CFT)、免震構造
- 受賞
- 第55回(2014年度)BCS賞
2014年 日本建築学会賞(作品)
東京建築賞2013 第39回建築作品コンクール 最優秀賞(一般部門二類)
2012年度 第25回 日経ニューオフィス賞 ニューオフィス推進賞
第53回 空気調和・衛生工学会賞 技術賞 建築設備部門
第6回 サステナブル建築賞 一般財団建築環境・省エネルギー機構理事長賞
第12回 照明デザイン賞 優秀賞
平成24年度 照明普及賞
平成24年度 CFT構造賞
- 雑誌掲載
- 新建築 2012.11
作品選集 2014
ディテール No.218
菅順二
帽田秀樹
松崎裕之
大宮由紀夫