「味の素スタジアム」に「バーティカル・フォレスト」採用~武蔵野自生の樹木をスタジアムの壁いっぱいに!~
2012年8月1日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:竹中統一)の開発した壁面緑化システム「バーティカル・フォレスト®」が、「味の素スタジアム」(調布市西町)の壁面約1,450m2を緑化するための技術として採用されました。「バーティカル・フォレスト®」は、世界であまり例が見られない樹木を本格的に取り入れた壁面緑化システムで、樹木の根を、個別の植栽パネルだけではなく、植栽パネル全域に自由に伸長させることにより、樹木が健全に生育し長年にわたり美しい緑化景観が維持されることを可能にしたシステムです。枝葉の拡がりを考慮した実質的な緑化面積は2,000m2になります。
様々な形状のスタジアムの窓や開口部を既存のまま残すという設計コンセプトを実現するため、5つのパターンの植栽用パネルを特別に製作し、パズルのように隙間なく配置しました。また、樹木はスタジアムが位置する武蔵野に自生している樹種から選定されました。
(緑化工事:期間 2011年8月28日~11月4日、施工 (株)朝日興産)
工事名称 | 味の素スタジアム(22)第1種陸上競技場化改修工事 |
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建築主 | 東京都 |
建築地 | 東京都調布市西町376番地3 |
階数 | 地上3階 |
設計 | 株式会社日本設計 |
施工 | 大成・坂田建設共同企業体 |
建物用途 | 競技場 |
延床面積 | スタジアム本体 84,772.83m2 |
構造 | スタジアム本体 S・RC一部SRC造 |
階数 | 地下1階、地上5階 |
2013年開催予定のスポーツ祭東京2013のメイン会場となる「味の素スタジアム」では、第1種公認陸上競技場とするための改修工事が行なわれました。また、第1種公認陸上競技場認定に必要となる補助競技場(第3種陸上競技場)として、「味の素スタジアム西競技場」が、西側敷地に建設されました。
【「バーティカル・フォレスト®」採用による熱的効果】
スタジアム壁面を緑で包み込むようにしたことで、樹木の蒸散効果や放射環境改善効果で緑化面の表面温度が低くなり、スタジアム壁面温度の上昇を抑制します。また、照り返し防止の効果が期待できます。
【樹木選定のコンセプト】
「味の素スタジアム」が位置する武蔵野に自生しているシラカシ、シロダモ、ヒイラギなど、今後形成される予定の “武蔵野の森” にふさわしい32種類の樹木が選定されました。一年を通して緑を確保するために常緑樹を多くし、残りは彩を加える季節ごとの花木や紅葉樹等の落葉樹としました。32種の樹木それぞれが最も生育しやすい環境を築くために、どの位置にどの樹木を植えるべきか、最適な植栽レイアウトを実施しました。
【「バーティカル・フォレスト®」概要】
世界であまり例が見られない、樹木を本格的に壁面緑化に取り入れた工法で、植物を生育させる植栽パネルと自動灌水装置、植栽樹木で構成されています。年間を通して多様な樹木が健全に生育し、意匠性の高い緑化景観を維持します。
緑化パネルの構成
植栽パネル
スタジアムの開口部の形状に合わせて壁面緑化を行うため、5種類の植栽パネルをパズルのように組み合わせています。
- ①W690×H900×D(35+150)
- ②W690×H560×D(35+150)
- ③W623×H900×D(35+150)
- ④W690×H560×D(35+150)
- ⑤W623×H900×D(35+150)
植栽パネルは、繊維補強セメントで製作された植栽ポットのある表面パネル、断熱ボード、保水性・排水性・通気性・保肥性を兼備した中間層の不織布基盤、リサイクルボードの4層構造になっています(出願番号2007-080305)。表面パネルは、安全性・耐久性に優れており、物があたって壊れたり強風で外れる心配がありません。取付けは乾式工法で行うので、作業現場を汚すこともありません。
灌水制御
灌水は最上部に設置したドリップホースによる自動潅水で、スタジアム外周を6系統に分けて、独立に灌水制御を行なっています。灌水量や灌水頻度は制御盤で年間設定します。施肥は、液体肥料を液肥混入機で希釈して適宜供給します。
【調布市都市計画マスタープランについて】
「味の素スタジアム」が位置する調布市の都市計画マスタープランでは、「武蔵野の森と多摩川の自然を生かしたふれあいと憩いのまちづくり」をテーマとして掲げており、これをもとに、「調布市地域別街づくり方針(2010年3月31日策定・設計時は(案))」において、「地域に残る自然環境と歴史・文化の環境資源の保全」や「公・民の連携による緑づくりの推進」等の目標が設定され、「武蔵野の面影を残し環境資源の保全」「身近な公園・緑地の整備」が推進する地域としています。
今回の改修工事では「味の素スタジアム」と「補助競技場」の緑を繋げて“武蔵野の森”にすることで、緑豊かな調布市の形成が志向されています。