複数の建物の屋上を構造体でつなぐ「エアトラック」を開発~アウトモール型SC「もりのみやキューズモールBASE」の屋上に300mのランニングトラックを実現~

2014年10月9日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:宮下正裕)は、複数の建物の屋上を構造体でつなぐことによって、下階の平面計画やリニューアルへの影響を与えず大規模な運動施設を実現できる「エアトラック」を東急不動産と共同で開発しました。(特許出願済)

  • エアトラックは東急不動産が商標登録出願済

近年、アウトドア志向の高まりから、屋外で過ごす時間が増える傾向にあります。都会においてもこのようなニーズに応える多様なアイデアが求められており、海外ではニューヨークのハイラインのように、都会を見下ろす高さの高架貨物線跡を、空中緑道として再利用している例もあります。
従来、屋上や建物内に運動施設を設置しようとする場合、建物の大きさに制約され小規模な施設しか設置できなかったり建物の計画に大きく影響します。
本開発では、複数の建物の屋上をつなぐ屋外型の大規模な運動施設を設けることで、単一建物の屋上や室内の運動施設では体感できない浮遊感の中で開放的に運動することができます。運動施設の大型化も可能で、市街地においても有効率を下げずに大型の運動施設を設置することが可能です。(図1~3)

図1屋上設置型

図1 屋上設置型
運動施設の大きさは建物の大きさに制約される

図2 屋内設置型

図2 屋内設置型
建物の計画に影響するだけでなく有効率が悪くなり、リニューアル中には運動施設を稼働できない

図3 エアトラック

図3 エアトラック
大規模な運動施設を建物の計画、リニューアルに影響することなく設置することができる

各建物を独立して構造設計をする従来技術の場合には、それぞれの建物で耐震性が成立するようにバランスよくブレース等を配置させる必要があり、建築計画にも制約が生じる場合がありました。(図4)
今回開発した技術では、複数の建物上部を屋外型運動施設でつなぎ一体化することで以下のようなメリットを生み出します。

  1. (1)接合部の剛性をコントロールすることで、建物の耐震性を向上させたり、ブレース等の設置場所の自由度を確保します。(図5)
  2. (2)接続部に制振デバイスを付与することで、建物の振動を抑制します。(図6)
    上部の運動施設は、ランニングトラックのような形状に限らず、円形や平板形状などさまざまな形が可能です。
図4 個別に建つ建物

図4 個別に建つ建物
それぞれの建物の各構面にブレース等が配置される

エアトラック付き建物(平面図)

図5 エアトラック付き建物(平面図)
複数建物全体をひとつの建物として設計し、ブレース等を集約配置できる

エアトラック付き建物(断面図)
図6 エアトラック付き建物(断面図)
エアトラックと建物を様々な形式で接合し、接合部を剛性調整し、下部建物の振動をコントロールすることができる。

■エアトラック採用事例(1周300m)

もりのみやキューズモールBASE

建築主 東急不動産株式会社
用途 店舗,スポーツ施設他
建築地 大阪市中央区森ノ宮中央二丁目1番2他
構造 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)
規模 地上3階
敷地面積 22,929.34 m2
延床面積 24,985.00 m2
設計・監理 株式会社竹中工務店
施工 株式会社竹中工務店
工期 2014年3月~2015年春