施工性と環境性に優れた放射線遮蔽ブロック壁「RadBlock-X」を開発~福島第一原子力発電所新事務本館新築工事において初採用~

2016年10月11日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:宮下正裕)は吉野石膏(社長:須藤永作)と共同で、石膏を主成分に天然素材を添加した新素材から成る放射線遮蔽ブロック壁「RadBlock-X」(特許出願済・商標登録出願済)を開発、福島第一原子力発電所新事務本館新築工事に採用されました。
この度開発した「RadBlock-X」は、主にガンマ線、X線に対して優れた遮蔽性能を発揮します。重量約16kgのブロックを積層施工するもので、施工性に優れ、短工期かつ工事騒音や粉塵の大幅な抑制が可能です。また、環境に優しい素材から構成され、施設内のレイアウト変更時にも再利用が可能です。
福島第一原子力発電所新事務本館新築工事においては、安全性をより強化するために、エントランスホール守衛室受付に設置しました。

今回適用したブロック

今回適用したブロック

今回採用された放射線遮蔽ブロック壁

今回採用された放射線遮蔽ブロック壁

原子力関連施設はもとより、放射線治療を実施する高度先進医療施設や最先端の研究施設において放射線を遮蔽する必要があります。従来、ガンマ線、X線といった放射線の遮蔽には、鉛板や鉄板などと併用して普通コンクリートが主に利用されています。在来工法では、現場でのコンクリート打設やモルタル目地部処理により、施工中に発生する騒音・粉塵・汚れの発生が完全に抑えられませんでした。
また、PC部材を活用した乾式施工とする場合には、遮蔽性能を十分に確保するために部材の寸法精度を高めることと、部材を構成する材料のばらつき(比重の均一性)を少なくすることが課題でした。

放射線遮蔽ブロック壁「RadBlock -X」の特

施工性:
重量約16kgのブロックを積層する簡易な施工法のため、施設内のレイアウト変更やリニューアルへの対応が可能です。石膏を主成分とした形状自由度の極めて高いブロックで構成されており、ブロックの上下左右端部を凹凸形状とし、壁周辺部の鉄骨フレームの溝部にはまるよう施工します。
必要とされる遮蔽性能に応じて、普通コンクリートに比べて部材を薄く設計することも可能です。また、耐震性においても設置条件に応じた十分な耐震性能を確保することができます。

遮蔽性能:
形状自由度により、ブロック製造時の製作寸法誤差は0.25%未満の高精度を確保し、接合部材を最小限に抑えることが可能です。これに加え、本遮蔽ブロックは普通コンクリートに比べ骨材(コンクリートを構成する石と砂)サイズに起因する密度のばらつきが極めて小さく、ガンマ線に対する遮蔽性能は普通コンクリート(比重2.3)に比べ約1.2倍※1高くなっています。

  • ※1遮蔽性能は対象とするエネルギーによって異なり、直接線が空気中や周辺物によって散乱することでエネルギーの低下した散乱線環境下では普通コンクリートに比べ1.9倍のガンマ線に対する遮蔽性能を実現。
ガンマ線に対する遮蔽性能

環境性:
石膏を主成分として、高濃度の重晶石(硫酸バリウム:BaSO4)などの天然素材を添加した新素材から構成されています。高い放射線遮蔽性能を確保しつつ、各種法令で規制されている鉛などの有害重金属を使用しない、人と環境に優しい素材から構成されています。

「RadBlock-X」は、病院内のPET、CT、癌の最先端の放射線治療、強度変調放射線治療、体幹部定位放射線など様々な放射線治療・診断施設やX線非破壊検査施設などにおいても適用可能であります。特に医療施設など工期や計画上の制約のある場合に、既存構造を損ねることなく施設を運用しながらのリニューアル工事にも対応可能です。また、設置条件に応じた十分な耐震性能を確保し、遮蔽性能と安全性を両立させます。今後は、原子力関連施設はもとより、放射線遮蔽が要求される様々な施設への新築・リニューアル工事に積極的に提案していきます。

福島第一原子力発電所 新事務本館新築工事

設計・施工 竹中工務店
構造 鉄骨造
階数 地上3階、塔屋1階
建築面積 8,570m2
延床面積 23,646m2
工期 2015年6月~2016年10月