「自動RI試験ロボット」を開発し、盛土締固め試験時間の短縮を確認~宇宙探査を想定した自走ロボットを建設現場にも応用~
2017年5月25日日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:宮下正裕)、竹中土木(社長:竹中康一)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:奥村直樹、以下JAXA)と共同で、自律走行により盛土締固め※1試験を自動化する「自動RI試験※2ロボット」を開発し、このたび人力作業無しでの実証試験を行い、従来方法に比べて15%の試験時間短縮を確認しました。
今後はプロジェクトへの適用に向けて、より耐久性の高い実用機の開発・実証を行い、RI試験の無人化を目指します。将来的には、宇宙探査にも有用な性能をそなえるべく技術開発を進めていきます。
- ※1盛土締固め:
道路建設や河川土工など土地造成において、将来大きな沈下が生じぬよう土の締固めを行い、強度の増加と圧縮性の向上を図る施工法。 - ※2RI試験:
RI(ラジオアイソトープ)から放射される微量な放射線を用いて、土中における放射線の減衰の程度を計測し、土壌の水分含有量と密度を計測する手法。道路建設や土地造成などの土木工事における盛土の締固めが適切に行われていることを確認する施工管理試験として用いられている。
「自動RI試験ロボット」はJAXAの保有する不整地走行ロボット「健気」と、自動計測用として選定したRI計測器を搭載した台車から構成されます。
今回の研究では、「健気」に、全地球測位システム(GPS)を利用した竹中工務店開発の自律走行制御ソフトウェアを実装し、各種センサーを取り付けることで、障害物を回避できるよう走行性能を改良しました。またRI計測器においては、竹中土木が自動計測をより行いやすい計測器を新たに選定・改良し、計測器に適した台車を組み合わせました。
高速道路の締固め試験で行った今回の実証では、自律走行制御ソフトウエアの実装により、広範囲に点在する締固め試験場所に向け順次走行し、従来試験器と同等の計測データを取得する一連の試験作業が確実に実施できることを確認しました。今後は、さらなる改善により、無人化を目指します。
実証計測データ
開発の背景
通常RI試験は日中に実施される盛土工事が終わってから実施されることが多く、施工当日のデータ採取が原則とされることから、夜間の作業になることが多くなります。さらにRI計測機器は重く、点在する各計測点間を持ち運ぶのが重労働となることから、試験時間の短縮や自動化・省人化が強く望まれていました。
当社では、JAXA宇宙探査イノベーションハブ(国立研究開発法人科学技術振興機構イノベーションハブ構築支援事業採択「太陽系フロンティア開拓による人類の生存権・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ」)の提案募集に採択され、2016年より3社共同で研究を進めてきました。そこで、月面や火星探査に向けて培われたJAXAの不整地走行ロボット「健気」を活かし、環境が必ずしも整備されていない建築・土木現場におけるロボットシステムの開発を進めてきました。