耐火集成木材「燃エンウッド®」(2時間耐火)を開発~高層木造建築プロジェクトへの適用に向けて試設計モデルを制作~
2018年1月30日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:宮下正裕)は、耐火集成木材「燃エンウッド」の柱および梁の開発において、耐火構造部材(2時間)の国土交通大臣認定を取得しました。
認定取得により今後の実プロジェクトへの適用に向けて、高層木造建築モデル「Alta Ligna Tower」を試設計しました。都市で大規模な木造建築を実現できる当技術の活用で、人にやさしく森林資源の循環に貢献するまちづくりを目指します。
当社ではこれまで耐火構造部材(1時間)の「燃エンウッド」を2013年の竣工プロジェクトから8件に適用してきました(そのうち2件は施工中)。1時間の耐火構造部材では4階建て、もしくは最上階から数えて4階層までを木造とする建物の建設に限られていましたが、このたびの2時間の耐火構造部材「燃エンウッド」を開発・実用化により、14階建て、もしくは建物の最上階から14層までを木造とする建物の建設が可能となりました。
これにより低層建築に限られた建築物の木造化が、中高層建築物にも実現可能となり、都市の木造化の可能性が高まりました。
また、「燃エンウッド」は、国産木材のスギ、ヒノキ、カラマツをはじめとし、産地指定による木材の使用が可能であり、国産木材利用と森林資源の循環という社会的取り組みへの寄与・貢献が期待できます。
「燃エンウッド」(2時間耐火)の概要
1時間耐火と同様、木材による「荷重支持部」、石こう系SL材と木で構成された「燃え止まり層」、木材の「燃え代層」の3層で構成される耐火構造の木造部材(集成材)であり、柱や梁といった構造部材として用いられます。耐火性能を確保するために、当社では燃え止まり層に集成材と石こう系SL材を組み合わせた断面構成で開発・実用化しました。
2時間の耐火構造では、1時間のものに比べて厳しい環境で部材内部に燃焼が広がらないような状況を作らなければならないため、燃え代層から燃え止まり層までの厚さを1時間耐火の85㎜に対して105㎜としてあります。(特許出願済)
耐火試験の概要
木造部材で耐火構造部材の大臣認定を受ける条件は、公的試験所による性能評価試験に合格する必要があります。耐火試験炉での2時間のバーナー加熱終了後、耐火試験炉内に放置し24時間以内に部材の耐火被覆層が自ら燃焼を完全に停止し、かつ構造体部分の非炭化が合格の条件となります。2時間仕様の場合、耐火試験炉の内部は1050℃まで上昇し、木材が燃えて炭化する温度260℃を大幅に超える状態で耐火性能を確保することが求められます。これにより鉄筋コンクリート造や鉄骨造の耐火構造部材と同等の耐火性能であることが証明されたこととなります。
「燃エンウッド」は、最外層の燃え代層がゆっくり燃えて熱の侵入を抑制し、第2層の燃え止まり層の石こう系材が熱を吸収して、荷重支持部が燃焼・炭化温度の260℃を超えない状況を作り出すことで、耐火性能を確保しています。
高層木造建築モデル Alta Ligna Tower
実プロジェクトへの適用に向けて、2時間耐火仕様の燃エンウッドにより実現可能な高層木造建築モデルAlta Ligna Tower(アルタ・リグナ・タワー)を試設計・制作しました。20階建ての高層建築で7~20階までに燃エンウッドを適用しています。当モデルは、低層階は商業施設や会議施設、高層階はオフィスの複合用途の建物を想定しています。
- ※Alta Ligna:ラテン語で“高い木々”
燃エンウッドの主な受賞歴
2012 | エコプロ大賞農林水産大臣賞 |
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2013 | 地球環境大賞国土交通大臣賞 |
2013 | 地球温暖化防止活動環境大臣表彰 |
2014 | 日本建築学会賞 |
今後の展開
現在、採用検討中のプロジェクトが数件あり、1時間耐火と2時間耐火の「燃エンウッド」を合わせて年間5~10件のプロジェクト適用を見込んでいます。
今後、当社では都市部の高層建築に「燃エンウッド」を適用し、住みやすい・生活しやすいまちづくりの技術として展開します。また、政府の推進する公共建築物等の木造・木質化に貢献し、国内の森林資源の循環を通じて環境問題の解決にも取り組んで参ります。