ロボットの作業を容易にする新溶接工法を開発~高層建物への適用に向けた実証実験に着手~
2019年11月20日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、高層建物の鉄骨柱の溶接※1において、ロボットの作業を容易にする新溶接工法(特許出願済)を開発しました。
従来、ロボットを用いた鉄骨柱(角形断面)の溶接においては、柱の四つの面を、ロボットが一面ずつ直線的に作業を行っていましたが、柱の角ではロボットによる溶接が取り合うため難しいという課題がありました。そのため、角の部分に関しては、熟練溶接技能者が柱と柱の継ぎ目の状態を確認しながら溶接を行う必要がありました。
このたび開発した新工法は、溶接する柱の角に仕切り部分(図1参照)を設け、それぞれのロボットの作業範囲を明確にすることで、柱の角も含めロボットによる溶接を容易にするものです。これまで人が行っていた溶接作業をロボットが代替することにより、人にかかる負担の軽減、熟練溶接技能者の高齢化や減少への対応、建物の安定した品質確保を実現します。
今後は本工法により適用範囲を拡大し、省人化・省力化を図り人手不足に対応するため、全店でのロボット普及・展開を推進していきます。
- ※1通常の鉄骨柱は、重量や長さといった運送上の都合により、鉄骨製作工場で15m程度の長さに分割して製作したものを溶接でつなぎ合わせて一体化する。
本工法の特長
- ①継ぎ目処理の作業負担の軽減が可能
- ②継ぎ目を削減することで安定した品質の確保が可能
- ③鉄骨製作工場における部材接合部の加工は、従来の延長で対応が可能
- ④溶接作業をロボットが代替することで、熟練溶接技能者の高齢化や減少に対応
本工法開発の背景
建設現場におけるロボット活用は、作業の高効率化を図るとともに、人にとっては過酷な作業を代替し「きつい・汚い・危険」といった3K産業からの脱却を目指す手段の一つとして注目を集めています。
しかし、一般的に建設現場におけるロボット活用は、人の作業をそのままロボットに置き換えるのみで、部材接合や施工方法などは従来のままというケースが多くみられます。従来の施工方法は人が作業することを前提としているため、ロボットにとっては合理的とはいえない場合があります。
当社は2019年4月以来、東京都内の建設現場において、異なる形状の柱や梁(コラム形状柱および大梁フランジ)に可搬型の溶接ロボットを適用し、安定した溶接品質の確保、熟練溶接技能者の代替となりうることを検証してきました。
ロボットにとって作業が容易な施工方法を取ることで、ロボットをより広い範囲に適用し、省人化や省力化の効果を高めることが重要であると考えています。