加温浄化剤により地盤を温め微生物による分解を促進する原位置浄化システム「温促バイオTM」を開発~浄化期間、コスト、CO2排出量を大幅に削減~

2020年10月15日
株式会社竹中工務店
株式会社竹中土木

竹中工務店(社長:佐々木正人)と竹中土木(社長:竹中康一)は、クロロエチレン類(以下、VOC)に汚染された地盤に対する、原位置浄化※1システム「温促バイオ」を開発しました。「温促バイオ」は、微生物による分解がもっとも活性化する約25~30℃に地盤を加温する機能と、不均質な地盤へ加温浄化剤を均一に注入する制御機能を両立した世界初のバイオスティミュレーション※2による原位置浄化システムです。

従来、VOC汚染土壌・地下水に対する浄化手法として、浄化剤を注入することで現地の地盤中に存在する微生物を活性化させ、VOCによる汚染土壌を浄化するバイオスティミュレーションが適用されていました。しかし、地盤中の一般的な温度である約15~17℃では、VOCを分解する微生物の活性度が低いことや、VOCが土壌粒子に固着し微生物による分解が進みにくいことが原因で、浄化期間が長期化していました。
今回開発した「温促バイオ」は、通常、約15~17℃の地盤温度を約25~30℃に加温することで、微生物によるVOCの分解を容易にします。さらに、現地分析可能な蛍光トレーサー※3を用いて加温浄化剤の拡散状況を見える化し、加温浄化剤が地盤中に均一に行き渡ったかを確認することで、効率よく分解を促進させます。これらにより、従来のバイオスティミュレーションと比較して、コストを同程度以下に抑えたままで、浄化期間を約50%以下に短縮することができます。また、重機を使用する掘削除去を必要最小限にできるため、全量を掘削除去する場合と比較して、コスト、CO2排出量を約50%以下まで削減できます。

  • ※1原位置浄化:汚染された土壌・地下水を、掘削を行わずにその場で浄化すること。
  • ※2バイオスティミュレーション:浄化剤を加えて汚染サイトに生息している微生物を活性化させて浄化する技術。
  • ※3蛍光トレーサー:地下水流動調査でのトレーサー剤として実績があり、環境負荷が低い物質を選定しています。
図1 「温促バイオ」の概要
図1 「温促バイオTM」の概要

現在、日本国内の土壌浄化の市場規模は年間約800億円といわれており、そのうちVOC汚染によるものが約40%を占めています。竹中工務店・竹中土木は今後、土壌・地下水汚染が原因で土地の有効活用、また土地再生が進んでいない用地などを中心に「温促バイオ」の適用を提案し、ユーザーの土地利用をサポートしていきます。

なお、本システムの開発は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の戦略的省エネルギー技術革新プログラムの助成を受け、横浜国立大学、岡山大学と共同研究のうえ実施しました。

「温促バイオ」の特長

  1. (1)加温浄化剤を注入して地盤を約25~30℃にすることで、土粒子に固着したVOCの脱離が促進され、微生物によるVOCの分解が容易になります。同時に微生物の活性度が向上し、VOCの分解速度が向上します。
  2. (2)地盤中で加温浄化剤と同じ挙動をする、現地分析可能な蛍光トレーサーを用いて加温浄化剤の拡散状況を見える化します。これにより、加温浄化剤を均一に行き渡らせるように浄化システムの最適な運転制御を行うことができ、浄化不良や再汚染のリスクを低下します。
  3. (3)本技術で使用する浄化剤として、外部で培養したVOC分解微⽣物を地盤中に注入することで、より高濃度のVOC汚染にも安価な原位置浄化が適用可能となります。

「温促バイオ」適用のメリット

  1. (1)これまで、掘削除去ではコストの面で、従来のバイオスティミュレーションでは浄化品質や浄化期間がネックとなっていた、汚染が深く広範囲に拡散した用地の浄化に効果的です。
  2. (2)加温するためのエネルギー投入を含めても、浄化期間の短縮により土壌・地下水対策工事全体では環境負荷の低減に寄与します。
  3. (3)土地利用をしながらの浄化が可能です。浄化期間の短縮と、浄化不良のリスクが低減できるため、土地の利活用の幅が拡がります。

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当社は、VOCや重金属類などの土壌汚染に対し、様々な対策技術を有しています。