登録有形文化財「名古屋テレビ塔」の免震改修工事が完了~高さ180m、 4,000tの巨大鉄塔を建ったまま地中で持ち上げ免震タワーに~
2020年11月20日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、名古屋テレビ塔(名古屋市中区:1954年当社施工)の免震改修を主とする全体改修工事を完了しました。
南海トラフ地震に耐える「MIRAI TOWER」へ
名古屋テレビ塔は、空襲で焼け野原となった名古屋の復興シンボルとして、1954年に誕生しました。設計は日本各地のランドマークタワーを手掛けた内藤多仲博士によるもので、日本初の集約電波塔として登録有形文化財にも指定されています。2011年のアナログ放送終了後は観光塔となり、この度、来る南海トラフ地震の想定震度6強にも耐える免震機能を付加した世界でも珍しい塔内ホテルをもつ「新・名古屋テレビ塔 MIRAI TOWER」に生まれ変わりました。
巨大鉄塔を地中の柱脚部分にて免震化
免震化の設計および監理は、株式会社日建設計(本社:東京、社長:亀井忠夫)により行われ、基礎柱脚部を切断し、免震装置を設置する工法が採用されました。これにより、基礎下面に設置の従来工法に比べ、掘削範囲など工事量を大幅に低減できるメリットがある一方で、裾広がりの形状に特有な「常に広がろうとする力(=スラスト)」を既設の基礎梁から新設の鉄骨タイビームへと安全に移行しながら免震装置を設置するという過去に例をみない施工技術が求められました。その解決のために「張力制御装置: TCD(Tension Control Device)」を日建設計と共同開発し、施工時の張力を厳密に制御しながら免震化を完了するとともに、「完成後の塔脚スパン35mの広がりを5㎜以下に抑える」との厳格な設計与条件もクリアしました。(共同特許出願済み)
1柱脚に多種の装置を集約する免震システム
通常の免震改修では1柱に1種類の免震装置の設置が一般的ですが、本建物は4柱脚からなる特殊構造のため①鉛直荷重支持の「直動転がり支承(CLB)」②変位を戻す「積層ゴム」③暴風時の居住性確保の「耐風ストッパー」④地震時の揺れを減衰させる「オイルダンパー」からなる4種類、計7台の装置を1柱脚に集約します。当社は各々の装置に応じた設計条件、例えば、積層ゴムと耐風ストッパーの上部基礎は鉛直荷重や施工時変形を避けるため最終段階にコンクリート打設するといった内容を含め、綿密な施工手順を計画しました。
スラストを制御しながら巨大鉄塔をジャッキアップし免震装置を設置
前述のスラストに対し既設の基礎や基礎梁が実際にはどのような力や割合で抵抗しているかを正確に把握することは、地盤抵抗など多くの不確定要素があるため不可能といえます。この不明確な力をどのように想定し「新設の鉄骨タイビームへの張力移行」と「免震装置の設置」の施工安全性を担保するかという点が施工計画の肝となりました。その解決のために、改修前の不明な基礎の水平拘束度を変化させながらシミュレーションを繰り返す独自の解析手法を考案しました。その結果、初期張力として4,900kN(約500t)を加えることで既設部材を安全に切断可能となり、完成後の柱脚間の広がりも制限内に納まることをあらかじめ検証することができ、25の複雑な工程からなる施工を無事完了することができました。
塔体の水平方向の動きに追従するしくみ
免震化により塔体は水平方向に最大50㎝程度動く設計となっています。今回、新設したエレベーター棟と本体は2~4階において斜めに接続するため特殊なエキスパンションジョイントが必要となりましたが、既成品を応用し実大実験にて性能を確認することにより実用化に至りました。
名古屋テレビ塔全体改修工事概要
建築名称 | 名古屋テレビ塔 |
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建築主 | 名古屋テレビ塔株式会社 |
建築地 | 名古屋市中区錦3丁目6-15 |
設計・監理 | 株式会社 日建設計 |
施工 | 株式会社 竹中工務店 |
工期 | 2019年2月1日~2020年8月31日(19ヶ月) |
建築用途 | 展望台、飲食、物販、宿泊等 |
面積 | 建築 1,211㎡、延床 3,799㎡ |
階数 | 地下1階、地上5階 (展望台は工作物) |
構造 | 鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造 直接基礎 [基礎免震] |
建物高さ | 最高 180m (建築 31m、展望台 90m) |
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