「TAKENAKA奥飛騨地熱発電所」が稼働開始~温泉を活用した地熱発電事業に参入~

2021年4月20日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷において、地元の奥飛騨宝温泉協同組合(本部:岐阜県高山市、代表理事:田中君明)と協働し、「TAKENAKA奥飛騨地熱発電所」として50kWの地熱発電事業を開始しました。地熱発電とは、地熱を用いて行う発電のことです。この事業では地熱として既存の温泉井を活用しています。

2021年3月から発電を開始し、年間の発電電力量は約500MWh(一般家庭の約100戸分の年間使用電力量に相当)を予定しています。発電した電力は、再生可能エネルギー特別措置法の固定価格買取制度を適用し、中部電力パワーグリッド株式会社に売電するとともに、エネルギーの地産地消を目指して一部を同施設内にある組合の温泉供給設備でも活用します。

「TAKENAKA奥飛騨地熱発電所」外観
「TAKENAKA奥飛騨地熱発電所」外観
発電機ユニット
発電機ユニット

施設概要

名称 TAKENAKA奥飛騨地熱発電所
発電方式 バイナリー発電
売電容量 49.9kW
場所 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根字一宝水200番335他

今回のプロジェクトは、豊富な熱資源を活用した発電事業を検討する奥飛騨宝温泉協同組合と、既存の温泉井を活用した発電事業を目指し全国で調査を進める当社の意向が重なり、協働事業化へと至りました。
当社は今後も地元組合と共に、当地区におけるさらなる事業発展に向けて、地熱資源の調査に着手していきます。この取り組みにより、SDGs推進の一環として脱炭素社会の実現に貢献できることから、熱資源が豊富な当該地域の活性化にもつながる再生可能エネルギー事業への発展を目指します。

発電方法と特長

当該井戸での地熱発電を推進するにあたり、揚湯管の見直しにより自噴井※1への改修を行いました。従来はエアリフト方式により温泉水を人工的にくみ上げていましたが、自然に噴出させることにより、効率的な発電が可能となりました。
また、発電方法は、温泉地での発電としては多く使われているバイナリー方式を採用しています。バイナリー方式は、温泉の熱水や蒸気を熱交換し、低沸点の媒体を気化してタービンを回す方式です。今回はバイナリー方式を採用しつつも、当社エンジニアリング本部が最適な技術と機器を採用する等、システム設計を行いました。

  • ※1自噴井:揚湯ポンプ等の動力を必要とせず自ら蒸気と熱水を噴出する井戸

今回の発電方法に関する主な特長は以下の通りです。

  1. エネルギー出力を最適化
    発電機の選定は、熱交換器選定の自由度が高く、冷媒を直接蒸気で加熱できるタイプ※2を採用しました。これにより蒸気による冷媒の加熱効率が上がるとともに、冷媒を加熱する水の循環ポンプが不要となるため、発電量が従来の約20%向上しました。
  2. メンテナンス性に配慮
    従来、熱交換器として使われていたプレート方式では、配管内に固着するスケール(温泉成分)を除去するために、熱交換器内を分解してメンテナンスする必要がありました。今回採用の熱交換器(蒸発器)※3では、分解して冷媒を抜かなくてもスケール除去が可能で、コンパクトかつメンテナンス性に優れています。
  • ※2磁気軸受けを採用した、発電モジュールの外部に熱交換器を設置できる蒸気熱源向け小型バイナリー発電機を採用
  • ※3プレート&シェル熱交換器を採用

TAKENAKA奥飛騨地熱発電所の仕組み

TAKENAKA奥飛騨地熱発電所の仕組み


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当社では脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、再生可能エネルギーを推進しています。