鉄骨小梁の耐火被覆を最大100%削減する床システムの耐火設計技術を確立し、プロジェクトに適用
2023年2月28日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木 正人)と日本製鉄(社長:橋本 英二)は共同で、鉄骨小梁の耐火被覆を最大100%削減する床システムの耐火設計技術を確立し、2件のプロジェクトに適用しています。床システムを構成する鉄骨小梁の耐火被覆を合理化した耐火建築物として、国土交通大臣の認定を国内で初めて取得しました。
このたび確立した床システムの耐火設計技術は、大梁・小梁・縦横に鉄筋が配置されたコンクリート床で構成される鉄骨造建物の床システムに適用するものです。
鉄骨造の耐火建築物では、建物の主要構造部※1となる鉄骨に耐火被覆を施すことが建築基準法で定められていますが、本技術の活用により床システムの耐火被覆の施工面積を最大で約7割まで低減することができます。このことは、使用材料の削減や工期の短縮につながり、近年大きな社会課題となっている建築工事における環境負荷の低減および生産性向上に寄与することが期待されます。
- ※1主要構造部:建築基準法で定義される防火や安全、衛生上重要な建物の部位を示す。具体的には壁・柱・床・梁・屋根・階段
竹中工務店は今後、地球環境保護やカーボンニュートラル、生産性向上といった社会課題の解決に貢献するため、省資源や工期短縮に大きな効果を発揮する本技術を積極的に適用していきます。
日本製鉄は、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)にも合致した活動(「住み続けられるまちづくりを」)を通じて、これからも社会の発展に貢献していきます。
技術概要
鉄骨造建物で火災が発生した場合、小梁に耐火被覆がないと、熱により強度が低下し、荷重支持能力が失われるとともに、床スラブのたわみが大きくなります。一方、床スラブは、たわみが大きくなると、内部の鉄筋に生じる引張力の鉛直成分が大きくなるため、床の荷重支持能力が向上します。
すなわち、小梁に耐火被覆がなくても、床システム全体としての荷重支持能力は、床スラブの向上分を考慮することで、火災時に必要な荷重支持能力が保たれることとなります。本設計技術は、この理論を実大試験体の実験および数値解析によって実証することで裏付けられています。
本技術の適用にあたっては、プロジェクトごとに耐火性能検証※を行い、建築基準法施行令第108条の3第1項第二号に定める技術基準に適合するものとして、性能評価機関での専門家による審査を受けた上で、国土交通大臣の認定を取得する必要があります。
- ※耐火性能検証:当該建物で通常想定される火災に対して、主要構造部(柱・梁などの構造部材と防火区画)が必要な耐火性能を有することを、実験や数値解析などの工学的な手法を用いて検証すること