ゲームAIを活用した「人流シミュレーションシステム」を開発～建物完成後の使われ方を計画段階で3D可視化し空間設計を後押し～

2023年12月7日
株式会社竹中工務店

竹中工務店（社長：佐々木正人）は、ゲームAI※1と当社が蓄積してきた人流計測データを活かした研究成果を※2用いて、現実に近い形で人の行動を再現し、建物の建築計画や設計プラン、什器等の配置計画に合わせて建物完成後の使われ方をシミュレーションすることが可能な「人流シミュレーションシステム」を開発しました。
「人流シミュレーションシステム」では、シミュレーション結果を建物設計図の３Dモデルの中で共有することができます。これにより、通路幅や展示物の配置変更、混雑緩和などのプランを検討する際、お客様との合意形成がスムーズに行われます。すでに複数のプロジェクトで活用しています。

今回開発した「人流シミュレーションシステム」の大きな特徴は、人の行動を現実に近い形で再現できることです。当社ではこれまで、実際の建物内外や広場、駅、展示会場などで人流計測やデータの分析・可視化を行ってきました。これまで蓄積されたリアルな人の流れである人流計測データをベースに、研究成果として得られたノウハウとゲームAIを組み合わせることで、人間のように考え行動を行うシミュレーションを実現しました。これにより性別、年代、趣味趣向などの要素を組み込み、さまざまな行動の統計値や計測値を反映した動きが再現できます。

例えば面白い展示物の前で立ち止まったり、疲れた時に休憩したりといった人々の自然な行動を、シミュレーション目的に合わせて様々なパターンで現実に近い形で再現・可視化することが可能です。

本システムの開発により、空間づくりの計画から運用改善まで、人流の側面から支援することが可能になりました。
今後は、AI学習に必要な人流データの計測・収集・分析を通じて最新の情報に更新し、進化するAI技術を活用して、商業施設をはじめ、様々な建物種別の計画に役立て、お客様に満足いただけるプランづくりを進めていきます。

※1ゲームAI：ゲーム内のキャラクターが実際の人間らしく、自身の周囲を知覚・記憶・思考して振る舞うための機能
※2研究成果：計測した様々な人流データに確率論、統計学、因果関係推論分析、デジタルペルソナ®分析により研究した行動分岐条件・感情パラメータなどの成果

1．本システムの特長

①ゲームAIを活用することにより、シミュレーション上の人間があたかも個性を持ち、周囲の状況に応じて行動を変えることで実際の人間の行動に近い人流を再現・可視化できます。
②平時やイベント時、曜日や時間ごとなど、１つの施設プランでも様々な利用シーンでシミュレーションが可能です。
③汎用的なゲームエンジンと３Dモデル（BIM）を活用して構築したことにより、建物や都市空間内での人流をリアルに可視化でき、現実に近い検討が可能です。

2．シミュレーション事例

利用者が安全で快適かつ魅力的な建物や空間を計画するにあたり、人流に関わる様々な要素を与条件としたシミュレーションを行い混雑緩和や集客向上などの検討を行いました。

①展示施設における計画段階での活用例
展示施設の入場口やアプローチ通路を検討するにあたり、通路幅や出入口の開口寸法を変化させるシミュレーションを行いました。そこでは、既存施設の来場者実績値を活用し、カップル、家族といったグループ構成や老若の世代等を与条件として反映しています。その結果、各パターンでの混雑具合をお客様と視覚的に共有し、入場口やアプローチ通路幅などのスムーズな計画の決定に役立ちました。
②屋外公共空間における計画段階での安全検証の活用例
歩行者と自転車が行き交う屋外公共空間では、滞留等により歩車の接触が起きやすくなります。様々な要素を加えることで、より安全で魅力ある公共空間の実現に向けて、対策を講じることができました。要素として、想定来場者数・自転車交通の割合・キッチンカーなど人が立寄る施設・周辺のイベント開催による一時的な通行量増加などが挙げられます。