CO2排出量を低減する地盤改良工法「CUCO®-CO2固定地盤改良」を開発-2025年開催の大阪・関西万博会場で工事用仮設路面の地盤改良に初適用-
2024年01月31日
株式会社竹中工務店
NEDO※1のグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクト(以下、本事業)の一環として、竹中工務店(社長:佐々木正人)は、鹿島建設、デンカとともに、本事業を実施するコンソーシアムであるCUCO®(クーコ)の幹事会社として、コンクリートの製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)排出量が実質ゼロ以下となる、カーボンネガティブコンクリート※2の開発を進めています。
今般、竹中工務店は本事業の成果として、コンクリート解体ガラから再生した微粉を炭酸化したCO2固定微粉(CCU材料※3)を用いた「CUCO®-CO2固定地盤改良」(以下、本工法)を開発し、従来の地盤改良工法に比べてCO2排出量を約5%低減しました。
本工法は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)三菱未来館(設計監理:三菱地所設計)の地盤改良の一部に適用され、建物工事中の大型重機用仮設走行路として用いられました。本工法が実際の地盤改良として適用されるのは今回が初めてで、地盤改良体として求められる性能を満たしていることを確認しました。
- ※1NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
- ※2カーボンネガティブコンクリート:製造時のCO2排出量よりCO2削減・固定・吸収量の方が多いコンクリート
- ※3CCU材料:CCUはCarbon Capture and Utilizationの略で、本開発ではCO2を資源として活用(固定)して製造されたコンクリート用材料のことを指す
適用の背景
地盤改良は、構造物の支持性能向上や斜面の安定性向上などの目的で、地盤を高強度化する技術です。特に日本では、国内セメント需要の約20%にあたる年間約800万トンを地盤改良で使用しており、本工法を用いた地盤改良の促進は、多くのCO2排出量低減が見込まれ、カーボンネガティブ社会の実現にとって欠かすことのできない要件です。
技術の概要
CUCO®が開発を進めるカーボンネガティブコンクリートは、CO2を「削減・固定・吸収」する技術を組み合わせたものです。このうち、本工法にはCO2を「固定」する技術、すなわちコンクリートを解体した際に排出される建設廃材(コンクリート解体ガラ)や地盤改良体の解体材に含まれるカルシウム分にCO2を固定させ、コンクリート用骨材やCCU材料として再利用することでCO2を貯留する技術を用いています。
今回の成果
本工法を2025年大阪・関西万博三菱未来館(設計監理:三菱地所設計)の地盤改良の一部に初適用し、建物施工時に大型重機の仮設走行路として用いました。本工法は約600m2の地盤改良エリアのうち約200m2に適用され、地盤改良体としての性能を満たしていることを確認しました。また、固定されたCO2は約160kgとなり、従来の地盤改良工法に比べてCO2排出量を約5%低減しました。
今後の展開
構造物の建て替えや解体に加え、地盤改良を施した地盤自体の解体増加により大量発生するコンクリート解体ガラや地盤改良体の解体材のリサイクルは、建設業界にとって解決すべき喫緊の課題です。
当社は、本工法の成果を長期間にわたる地盤改良体の強度やCO2固定量の調査に活用し、2030年には液状化抑止などに用いる地盤改良への適用を目指します。
CUCO®はNEDOと一体となって、コンクリート製造時などにおけるCO2削減・固定・吸収技術の開発、改良、社会実装に取り組み、カーボンネガティブを実現することで、脱炭素社会の実現に貢献します。