仮設足場不要の天井落下防止対策「タフティングサポート構法」を開発~劇場の既存天井に初適用、公演を継続しながら低コストで落下防止対策を実現~
2024年3月8日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、株式会社オクジュー(社長:熊本辰視)と共同で、仮設足場を設置することなく既存の吊り天井の落下防止対策工事を行うことができる「タフティングサポート構法」を開発し、劇場の既存天井に初適用しました。
2011年東日本大震災における劇場や体育館などの大規模空間の天井落下被害を受け、2013年の建築基準法告示改正において、新築建築物の特定天井※1(脱落によって重大な危害を生じるおそれがある天井)に対して「建築物における天井脱落対策に係る基準」が定められるとともに、既存建物の天井には「落下防止措置」等の適用が制定されました。しかし、これまでの既存建物における天井落下防止措置は、天井を下から覆うネットを設置する等、仮設足場が必要な構法でした。このことが、施設の継続利用を妨げ対策工事が進まない現状となっています。(国内の劇場・音楽堂では約2割が対策未実施、約2割が不明※2)
- ※1特定天井:日常的に人が利用する場所の吊り天井で高さ6m超、面積200㎡超、質量2kg/㎡超のもの
- ※2文化庁「令和4年度劇場・音楽堂等の活動状況に関する調査報告書」公益社団法人 全国公立文化施設協会,令和5年3月
今回開発した「タフティングサポート構法」は、万一、天井材が既設の下地から外れた場合に、新開発の「タフティング金物」が天井を保持し、落下を防ぐ構法です。この構法では、天井材の強度評価とともに、タフティング金物を使って、天井裏と床面の作業だけで施工できる手順を確立しました。そのため、仮設足場が不要となることに加え、施設を利用しない夜間でも短時間で金物を設置でき、勾配のある天井にも対応可能となりました。従来の落下防止措置と比較して、施設の利用を継続しながら施工費を約60%削減できる利点があります。
当社はこれからも、施設の利用を継続しながら低コストで実現可能な天井の落下防止対策構法として、本構法を積極的に提案し、安全・安心な社会の実現に向けて貢献します。
■タフティングサポート構法の特長
- ・地震等による損傷で、天井材が既存部材群(吊元、吊元受け、吊りボルト等)から外れた場合に、タフティング金物が天井材を支持して落下を防止します。タフティング金物は、衝撃を考慮して設計した新設部材群(ワイヤー、吊元、吊元受け、吊りボルト等)により、既存鉄骨等の構造部材から支持を行います。
- ・タフティング金物は薄く小さいため(Φ90mm、厚さ4.5mm、取付間隔800×1,000mm四方程度)天井面のデザインを変更することなく、音響性能への影響も最小限に留めることができます。
- ・本構法の構造安全性を確認する試験を行い、一般社団法人 構造調査コンサルティング協会の性能証明(STREC-C021号)を取得しています。
■施工手順
- ①天井裏から天井ボードに孔を開ける
- ②天井裏から孔を通してワイヤーを床面まで垂らし、タフティング金物を天井まで吊り上げる
- ③天井裏からタフティング金物を天井に取り付ける
- ④天井裏でタフティング金物にアイナットを取り付け、ワイヤー等で支持する