大阪・関西万博 PW西工区の大屋根リングが上棟
2024年6月7日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)を中心とする共同企業体(当社JV)が工事を担当する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の大屋根リング建設工事(PW西工区)において、大屋根リングが6月7日に上棟(最上部の梁が取り付けられ、柱や梁など建物の基本構造が完成すること)しました。
大屋根リング建設工事は、全周で約2kmあり、その内の約700mを当社JVが担当しています。当初のスケジュールでは、大屋根リングの上棟は、本年8月上旬でしたが、予定より2か月早い上棟となりました。
当社は、慢性的な建設技能者の不足や本年4月から建設業に適用された時間外労働の上限規制などを踏まえ、BIM、IoTをはじめとするデジタル技術や竹中新生産システム(※)の採用を積極的に進めています。
本工事においては、昨今の関西圏での建設技能者の逼迫や夢洲特有の物流面での問題に加え、柱・梁・床・屋根を構成する20万点超にのぼる大量の木関連部材の実施設計や施工においても、解決すべき課題が多数ありました。従来の建設生産方式で設計から施工までを行った場合、膨大な時間と労務を要することが予想されました。またPW西工区は他の工区に比べ、パビリオン等の建屋の密集度が高いため、早期に大屋根リング工事を完了し、搬入車両や大型重機を無くすことで作業スペースを確保するなど工区全体工事の円滑化を図る必要がありました。
そこで上記の課題解決のためデジタル技術や竹中新生産システムなどを駆使した建設生産方式で、工事を進めてきました。
当社では、本取組みによって従来の建設生産方式と比べ工期を2か月程度、かかる人員を15%程度削減したと試算しています。
- (※)竹中新生産システム:建設技能者不足、建設業における時間外労働の上限規制、社会のデジタル化などの環境変化に対し、お客様ニーズに応える生産力及び建設サービスの提供をめざした建築生産変革の取組み。
当社は今後も、最新の知見を積極的に取り入れて、デジタル技術を駆使した新たな技術や建設生産の仕組みを開発していきます。
デジタル技術や竹中新生産システムを採用した具体的な取り組み
竹中新生産システムは以下の4点を活動の柱としています。
- ①生産性向上効果の高い施工計画(最適構工法)の早期検討
- ②特定のBIMソフトに依存しないオープンBIM方式での効果的な生産準備
- ③現地工数の削減を目指したオフサイト化の推進(オフサイト ロジスティクス)
- ④最先端の全自動デジタル加工技術の活用(デジタルファブリケーション)
まず施工計画の段階で、3Dプリンターにより出力した模型とBIMソフトのSolibriを使い、大屋根リングの最適な建方工法を選定しました。次に設計から施工まで、各フェーズや各職種で使用される多種類のBIMソフトを共通データ形式で連動させる「オープンBIM」方式を駆使しました。
大屋根リングには我が国の木造建造物の伝統的な工法として多くの神社仏閣に見られる貫接合(垂直の柱の中央部に開口をあけ、そこに貫と呼ばれる水平の梁を通し、その貫の上部に楔(くさび)を打ち込むことで固定する接合方法)が用いられています。
当社施工の大屋根リングではこの貫接合部を現代技術でアップデートし、木のめりこみを抑制することにより、基本構造部の剛性と強度を向上させています。実施設計段階では複数の部材を適材適所に採用し、接合部をBIMにより忠実にモデル化しました。
施工図作成段階では、曲面の描写に優れているRhinocerosとアドインソフトでプログラミング機能のあるGrasshopperを採用し、作図期間を大幅に短縮しました。
次に製作段階では木部材の加工機の丸のこやドリルの動作確認のために、加工機にデータを入力し、デジタルツインで加工シミュレーションし製作精度を向上させました。
当社が作成したBIMデータを連動させた加工機により部材のカットから細かな穴あけまで完全自動で木部材の製作を行い、製作時間の短縮と省人化を実現しました。
これらにより木部材の製作時間の短縮と省人化を実現しました。大量の木部材と取付金物の物流管理はMicrosoftのTeamsとExcel、そしてPower BIを活用して「見える化」し、ロジスティックセンターにて多数の細かな部材を集積、組立を行った後、ジャスト・イン・タイムで現場搬入することで、効率的な製作と運搬、施工を可能としました。
このように、従来は熟練大工による職人技が必要とされた木造建造物の領域においても、部材の設計から製作、現場搬入、施工までシームレスなデジタル技術を駆使して工事を進めています。
大屋根リング建設工事(PW西工区) 工事概要
所在地 | 大阪府大阪市此花区夢洲中一丁目地先 |
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階数 | 2階 |
高さ | 約20m |
構造 | 木造 |
用途 | 歩廊 |
実施設計 | 株式会社竹中工務店 |
工事監理 | 株式会社竹中工務店 |
施工者 | 竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木共同企業体 |
竣工予定 | 2025年2月末 |