公道における搬送車両、都市部におけるドローンの自律運行技術を確立~資機材置き場から作業員の手元まで 建設物資の自動運搬を目指す~

2024年7月18日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、国土交通省が推進する「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)※1」の一環として、公道における搬送車両自律走行および都市部におけるドローン自律飛行技術の確立を目指し、実証実験を実施しました。
なお、搬送車両自律走行はアダワープジャパン(社長:安谷屋樹)、ドローン自律飛行はセンシンロボティクス(社長:北村卓也)との共同実験です。
3社の取り組みは、令和6年度の「Project PLATEAU」「建築・都市DXの推進に向けたユースケース開発業務」にも採択されました。この一環として、大阪・関西万博会場建設の進む夢洲地区において、車両の自律走行により建設現場内で資機材を搬送し、ドローンの自律飛行で作業員の手元まで届ける実証実験などを行う予定です。これにより、建設現場における生産性向上や省人化を目指します。

  • ※1Project PLATEAU:国土交通省が推進する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト。誰もが自由に都市のデータを引き出し、活用できるようになることを目指す。
    (3社参画の事業は、令和4年度は川崎市・大阪市、令和5年度は横浜市・大阪市・堺市にて実施。)

①公道における搬送車両自律走行

従来、搬送車両が自律走行するためには、事前にLiDAR※2を搭載した車両を現地で人が走行させて点群マップを作成するという煩雑で高コストな作業が課題となっていました。そこで当社とアダワープジャパンは、都市を3Dモデル化した仮想空間で、LiDARを搭載した車両を走行させて点群マップを効率的に作成し、このマップを用いて現実空間で自律走行するシステムを開発しました。
実証実験は、大阪市などの公道を対象に行いました。実験の結果、仮想空間内で作成したマップに従い、搬送車両が現実空間で正確に自己位置を推定しながら自律走行できることを確認しました。なお、同システムは「Project PLATEAU」の3D都市モデルを活用した日本初の自律走行システムとなります。

公道における自律走行の実験状況
公道における自律走行の実験状況

②都市部高層ビルの谷間におけるドローン自律飛行

通常、ドローンの自律飛行はGPSを用いて自己位置を特定することで行われますが、GPSの受信状況が悪い高層ビルの谷間などでは、飛行安定性が確保できないという課題がありました。
そこで当社とセンシンロボティクスは、従来のGPSに加え、建物との距離を計測するLiDARと移動量を算出するVIO※3の2つのシステムをドローンに搭載しました。
まず事前に、3D都市モデルからドローン飛行用の点群マップを作成します。ドローンは実際の高層ビルの谷間などGPSの受信状況が悪い場所を飛行する場合、作成した点群マップとLiDARを活用して飛行し、同じ形状の窓が並ぶ高層ビルの周辺など、LiDARによる測位精度が低下する場所ではVIOの画像判断により測位精度を確保します。
実証実験は、大阪府堺市の高層ビルが立ち並ぶエリアにて、建物に沿って高高度の飛行を行い、建物の屋内に着陸するルートを設定し、本開発システムを用いたドローン自律飛行を実施しました。実験の結果、高層ビルの谷間においても正確かつ安全に建物屋内外を自律飛行で往来できることを確認しました。

  • ※2LiDAR(Light Detection And Ranging):照射レーザーの反射光により、対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術。
    (3社参画の事業は、令和4年度は川崎市・大阪市、令和5年度は横浜市・大阪市・堺市にて実施。)
  • ※3VIO(Visual Inertial Odometry):連続的に取得されたカメラ画像の変化を捉えることでドローンの移動量を算出する技術。
飛行ルートの設定画面、高層ビル付近の飛行状況、建物屋内への着陸状況

建設業界では、就業人口の減少や労働時間の規制に伴い、生産性向上が急務となっています。当社は今後、本実証実験で得られた知見を活かし、建設工事に関わる移動・搬送の円滑化を進めていきます